かわら版 2017年 夏号
プロメガ株式会社 Promega KAWARABAN サポートします。 創薬、がん研究を テクノロジーで プロメガ 二〜三頁、 〜極小の発光タグでありのままのタンパク質機能解析を 発現タンパク質検出法に革命! ~ 四頁、 アポトーシス & ネクローシスを リアルタイムに一発測定 五頁、 キナーゼ標的創薬 ターゲットエンゲージメントが切り拓く 六頁、 プレートリーダー論:プロメガが求め、磨き上げる、真のスペック 七頁、 核酸 遺伝子関連検査を支える 自動抽出装置 Maxwell® RSC, FFPE 編 2017年夏号 ありのままの細胞解析 ● 生細胞で“生きたまま”タンパク質定量が可能(生細胞アッセイ) ● 小さなタグ(11 アミノ酸):ウィルスゲノム挿入やゲノム編集への応用 ● 抗体不要で迅速・簡便に溶液中、ブロッティングメンブレン上のタンパク質定量が 可能(細胞溶解アッセイ) 近年、生きた細胞を用いて生理現象を“ありのまま”検出したいというニーズが高まっており、特に ライブセルでの実験系、ゲノム編集によるタンパク質の機能解析など、より内在的な解析法が求め られています。プロメガは抗体を用いること無くこれまで実現が難しかった“生きたまま”の 細胞で もタンパク質定量が可能な画期的な発光タグシステムを開発しました。HiBiT system は 11 アミノ酸 のペプチドタグと、それに結合する相補的な NanoLuc® ルシフェラーゼ断片と基質を用いた発光法に よって目的タンパク質を検出する技術です。すでに実用化されているタンパク質検出タグとして、ア フィニティータグ(His、c-Myc、FLAG 等)や GFP 等の蛍光タンパク質が知られていますが、簡便性、 親和性、アプリケーション、ランニングコストの面で長所と短所があるため、実験により使い分ける 必要がありました。HiBiT system はタンパク質定量に関して、これらいずれの点においても高い性能 を持ち、これまで難しいとされた様々な実験系を実現できる世界初の新規発光タグシステムです。 名古屋大学 医学部保健学科 理学療法学専攻 亀高 諭 先生 亀高先生は骨格筋が再生する際に見られる筋芽細胞の融合現象の定量化の手法を探しておられました。細胞 融合のモニタリングにはこれまで GFP や RFP などの蛍光タンパク質が一般的でした。2 つの細胞にそれぞれ の蛍光タンパク質を発現させ、細胞融合によりそれらが merge し、ダブルポジティブな細胞をイメージング により細胞融合を評価する系です。ただしこの手法は基本的にはイメージングでの定量であるため、定量性 やスループットに限界がありました。今回 HiBiT をご紹介したところ、細胞融合により発光定量ができる点に 注目頂き、これまで実現できなかった細胞融合の定量化手法としてご検討頂くことになりました。 筋芽細胞の細胞融合の定量化 HiBiT 開発までの道のり 2012 年、プロメガはより明るく小さい新規のルシフェラーゼとして NanoLuc® ルシフェラーゼを開 発しました。これにより従来のレポーター遺伝子アッセイの高感度化だけでなく、タンパク質レポー ターとして新たなアプリケーションにも展開できるようになりました。 2015 年、大小 2 つの NanoLuc® 断片の相補性を利用した NanoBiT® System をタンパク質間相互作用 の解析ツールとして開発しました。この技術により、これまで難しかった生細胞でのタンパク質間 相互作用を高感度に定量できるようになりました。開発の過程で大きな断片であるLarge BiT (LgBiT) [ 約 18KDa] と相補性を持つ小さなペプチド断片(11 アミノ酸)をスクリーニングし、最も親和性の 低い断片(Kd=190 µM)を Small BiT(SmBiT)として NanoBiT® に採用しました。さらに、最も高い 親和性を有するペプチド(Kd=700 pM)を HiBiT と名づけ、発現タンパク質を高感度に検出するため の発光タグとして様々なアプリケーションについて検討を行いました。 アルファテスターのご協力 HiBiT は不可能を可能にする新しいタンパク質検出方法として広範な用途への利用が考えられ、多く の方にテスターとしてご意見を賜りました。日本国内でも 30 名以上のテスターの方に種々のテスト 実験をして頂き、頂いたフィードバックをもとに製品開発の参考にさせて頂きました。そのうちの 3 名のテスター参加者への導入エピソードをご紹介致します。 9 月の NanoLuc® ユーザー講演会では、上記 3 名のテスターの先生に HiBiT を利用した研究についてご発表頂く予定です。 詳細および参加登録については最終ページをご覧ください。 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 システム発生・再生医学研究分野 松島隆英 先生 松島先生はこれまで分泌タンパク質の細胞外での定量に様々な手法を検討されていました。ELISA assay や質量分析の手法では相性のよい抗体が必要、また HTS に向かないなどの問題がありました。そこで、 NanoLuc® 融合タンパク質を用いた実験系をご紹介し、特に HTS での簡便な実験系ができるようになりま した。さらに今回 HiBiT をご紹介し、より内在的な解析のための CRISPR-Cas9 system によるゲノム編集が 可能になり、培養細胞だけでなく最終的には究極的な”生きたまま”の実験系であるマウス in vivo 解析 へと展開して頂いています。 レポーターのウィルスゲノムへの導入 ハイスループットかつ“生きたまま”の分泌タンパク質定量Luminescance (RLU) HiBiT : 700 pM Spontaneous complementation Facilitated complementation e.g., protein interactions Native : 900 pM SmBiT : 190 µM 104 -12 -9 -6 -3 105 106 107 発現タンパク質検出法に革命! ~極小の発光タグでありのままのタンパク質機能解析を~ 図 1. スクリーニングより得られたペプチドと LgBiT との 親和性 CRISPR Cas9 大阪大学微生物病研究所 分子ウイルス分野 福原崇介 先生 福原先生はハイスループットなスクリーニング系構築のための、様々なウイルスを利用した変異ウイルスレ ポーター作製を研究しておられました。問題点として、小型ウイルスでは Firefly などの大きなルシフェラーゼ の挿入は困難であるという点がありました。そんな中、小型のレポーターとして NanoLuc® をご使用頂き、C 型肝炎ウイルスなどの小型ウイルスへの導入が可能であることを検証頂いておりました。さらに今回、ペプチ ドレベルまで最小化した HiBiT をご紹介し、これまでレポーターの挿入が不可能であった多くのウイルスにレ ポーターの導入が可能になるとの声を頂き、検証して頂いております。 HiBiT Protein Detection PPI LgBiT SmBiT (11 a.a.) (17.6kDa) (11 a.a.) high affinity low affinity 2 細胞ライセートのタンパク質定量 HiBiT Lytic Assay 細胞溶解アッセイ生細胞アッセイ 目的タンパク質に HiBiT を付加し、細 胞内で発現させ、細胞溶解成分を含 む試薬(LgBiT、NanoLuc® 基質を供給) を添加して発光測定する。 HiBiT を付加したタンパク質として発 現した膜タンパク質・分泌タンパク質 等を細胞を生かしたまま定量する。 検出試薬に含まれる LgBiT は細胞膜 非透過性なので細胞表面のタンパク 質または細胞外への分泌タンパク質 のみ検出できる。シンプルな添加・検 出フォーマットにより、受容体の細胞内移行、受容体のリサイクリング、タンパク質分泌、 細胞膜移行をリアルタイムで測定可能。 アプリケーション例 ● GPCR 受容体の生細胞での内在化定量 生細胞の膜タンパク質、分泌タンパク質の定量 HiBiT Extracellular Assay HiBiT 付加タンパク質を発現させた細胞を溶解 し、SDS-PAGE 泳動、メンブレン転写する。メン ブレンに LgBiT および NanoLuc® 基質を含む試 薬を添加し、目的タンパク質をバンドとして検 出する。 ブロッティングメンブレン上でのタンパク質定量 HiBiT Blotting 2種類の細胞あるいは細胞とウィ ルスなどの組み合わせで、それ ぞれの細胞に LgBiT、HiBiT を発 現させ、それらが融合すると自 発的に会合し、基質添加により 発光定量する。挿入配列の長さ に制限のあるウィルスゲノムや CRISPR-Cas9 によるゲノム編集に 応用することにより、内在性ゲノム、ウィルスゲノム中の遺伝子のマーカーとして利用可能。 アプリケーション例 ● ウイルス感染あるいは複製(極小 HiBiT がウイルスゲノムへの挿入に好適) ● 細胞融合 ● アクセプター細胞への Exosome デリバリー ● 生細胞での細胞内タンパク質の定量 細胞内タンパク質会合による細胞融合、ウイルス感染の検出 HiBiT Intracellular Assay プロメガ NanoLuc 検索 ● 試薬を 1 回添加するだけのシンプルな手順 ● 10 分以内に実験完了 ● 7 桁以上の広いダイナミックレンジ(30kDa タンパク質で 10fg-100ng) HiBiT の特徴とアプリケーション HiBiT システムのベースとなる HiBiT は大きさがわずか 11 アミノ酸であり、高い親和性(Kd = 約 1 nM)で LgBiT と結合して NanoLuc® を再構成し、強 い発光を生じます。この非常に明るい光により過剰発現させることなく内在レベルで発現する目的タンパク質の定量化が可能であり、CRISPR 等のゲ ノム編集技術と組み合わせて内在ローカスにこの HiBiTタグを埋め込むことで実質的にあらゆるタンパク質の発現をモニタリングすることができます。 また、 SDS-PAGE で分離したHiBiT タグ付きタンパク質をブロッティングし、LgBiT を含む検出試薬を添加するだけでフェムトグラムレベルの感度でタン パク質を検出することがきます。さらに、細胞を溶解することなく HiBiT タグタンパク質の細胞表面発現、膜受容体の内在化、また分泌タンパク質 を数分で測定することもできます。シンプルな 1 回試薬添加のアッセイプロトコールなのでハイスループットアプリケーションにも最適です。 キーポイント 明るい 高輝度 NanoLuc® の発光 シンプル 抗体不要、標準 的なルミノメーター 小さなタグ(11 アミノ酸) 対象タンパク質への影響が 最小限、ゲノム編集に最適 トランスフェクション またはゲノム編集 目的タンパク質 HiBiT HiBiT 融合タンパク質の 細胞内発現 NanoLuc® 基質 細胞溶解剤 LgBiT 1 2 3 4 ● 試薬を 1 回添加するだけのシンプルな手順 ● 30 分以内に実験完了 ● 抗体不要・特異的 : シグナルは HiBiT と LgBiT の結合でのみ検出 →非特異的バンドは検出されない 融合、感染 ※本アプリケーションでは2つの細胞にそれぞれLgBiT、HiBiTを発現させる。 メンブレン SDS-PAGE + Blotting + log RLUs log moles HaloTag-HiBiT Protein Background-subtracted RLUs Raw RLUs Detection of Purified Proteins -20 -19 -18 -17 -16 -15 -14 -13 -12 -11 10 1 2 3 4 5 6 7 8 9 9 月! 堂々発売スタート!! 詳細については弊社までお問合せください。 HiBiT システムは 3Promega KAWARABAN アポトーシスと Annexin V アポトーシスは不要な細胞や老化した細胞、異常な細胞を取り除く、 分子機構に制御された細胞死です。DNA のフラグメント化やミトコンド リア膜電位の変化などがアポトーシスの特徴として知られており、アポ トーシスの検出マーカーに活用されています。細胞膜の内側に存在する リン脂質、フォスファチジルセリン(PS)もその 1 つです。 PS は細胞膜の内側のみに局在しますが、アポトーシスが起こると PS は細胞膜の外側に露出するようになります。Annexin Vはカルシウムイオン 依存的に PS に強く結合するリン脂質結合タンパク質です。Annexin V の 特性を活用し、初期アポトーシスの検出に利用されています。 発光法を用いた Annexin V・PS の検出 従来法では蛍光標識した Annexin V と、細胞膜非透過性の DNA 結合蛍 光色素を用いて、アポトーシスとネクローシスをフローサイトメトリーを 使って評価しています。アポトーシス初期には PS を介して結合した蛍光 Annexin V により標識された細胞が検出されます。後期アポトーシスで は、細胞膜の完全性が失われるため、より強い Annexin V の標識がなさ れるのに加え、DNA 結合蛍光色素が細胞膜を透過し、DNA に結合する ことで蛍光シグナルを発するようになります。 フローサイトメトリーを使用するメリットの1つとして、細胞集団中の生 細胞、アポトーシス、ネクローシスの細胞の割合を出せる点があります。 その一方で、フローサイトメーターでの測定ではサンプル調製が煩雑・ スループット性が低いというデメリットがあります。 従来法のデメリットを改善するため、プロメガは得意の発光測定技術 を活用し、Annexin V をプレートリーダーで測定可能にしました。図 .1 にはその原理を示しています。 プロメガは、NanoLuc® をもとに開発した NanoBiT® の各タグと Annexin V の融合タンパク質(SmBiT-AnxV および LgBiT-AnxV)を合成しました。 これら融合タンパクを試薬としてアポトーシスを起こした細胞に振りか けると、細胞膜外に露出した PS と SmBiT-AnxV / LgBiT-AnxV が結合、 PS との結合を介して AnxV が重合し、SmBiT : LgBiT が接合、NanoLuc® の酵素活性が回復します。すなわち、Annexin V と PS の結合を発光シ グナルにて評価します。また、細胞膜非透過性の DNA 結合色素も加え る事で、従来法と同じく後期アポトーシスも同時に解析することが出 来ます。 (NanoBiT® については、かわら版 2016 年春号をご覧ください:www. promega.co.jp/pdf/kawara_1604_p2.pdf) 経時的なアポトーシスの評価・測定 プロメガは Annexin V 検出技術を発光アッセイに応用して従来法よりも 高感度・低バックグラウンド測定を可能にしただけでなく、アポトーシ スの経時変化を追跡できるリアルタイムアッセイを実現しました。アポ トーシスの評価では測定タイミングが重要なファクターであり、従来法 では複数のサンプルを用意し、最適なタイムポイントを見出す必要があ りました。 プロメガの Annexin V の発光測定では、試薬を添加するのみで、細胞を培 養した状態で経時的にアッセイできるため、1 枚のプレートから多くの情 報を引き出す事が可能です([アポトーシス + ネクローシス]× 経時変化)。 図 2 にはアポトーシス誘導を行い、経時的に Annexin V の測定を行った 例を示しました。Annexin V の発光シグナルの増加の後に、DNA 結合試 薬の蛍光シグナルの増加が観察されており、1 枚のプレートから最適な 測定タイミングや細胞死の作用機序を調べる事が可能です。 Annexin V に付加した NanoBiT® の発光は非常に強くプレートリーダーで 高感度にアッセイすることができますが、さらにその発光強度によりオ リンパス社 LV-200 を用いた発光イメージングにより初期アポトーシス の様子を観察することができます。 最後に 今回紹介した Annexin V に加え、カスパーゼの活性化もアポトーシスの 主要なマーカーとしてよく使用されています。Annexin V のシグナルが上 がってきたタイミングでカスパーゼの活性評価を行うマルチアッセイも 可能です。プロメガには発光でカスパーゼの活性を測定する技術もあり ます。Annexin V とカスパーゼ活性の同時評価についてもお気軽にお問 い合わせください。 キーポイント 簡単な測定プロトコル Add to Measure の簡単プロト コル・最大 48 時間までの経時的なアッセイが可能。 フローサイトメーター不要 発光測定と蛍光測定に対応したプ レートリーダーにて簡便に測定可能!Throughput も格段にアップ! 様々なサンプルでの応用例 通常の 2 次元培養サンプルに加 え、3 次元培養サンプルや共培養アッセイ(CTL アッセイ)にも応用可能。 アポトーシス & ネクローシスをリアルタイムに一発測定 細胞ビックバン – 高次元細胞プロジェクト 細胞が増殖するのか、それとも細胞死が起こるのか…細胞に起こる現象を調べることは、遺伝子機能の解析や創薬開発などの研究における初期ステッ プの1つです。これまでに種々のマーカーを用いて、細胞の増殖やプログラムされた細胞死(アポトーシス)を評価・測定する手法が開発されています。 アポトーシスマーカーであるカスパーゼのアッセイ法 は操作性もシンプルであり、スクリーニングなどの用途に最適ですが、細胞内の酵素を測定する ために細胞を溶解するエンドポイントアッセイであり、最も活性の高いタイミングを事前に見極める必要がありました。Annexin V を利用した測定方 法は細胞表面に起こる変化を捉えているため細胞を破壊せずにアポトーシスの形成過程(細胞死メカニズム)を詳細に観察するためにはきわめて有 用です。今回プロメガが開発した発光 Annexin V アッセイは、従来のフローサイトメトリーによる検出法で抱えていた簡便性、スループットなどに関 わる問題を解決すると同時に経時的な観察を可能にしたアポトーシスアッセイの決定版とも言えるツールです。 図 2. 経時的なアポトーシス / ネクローシスアッセイ DLD-1 細胞を 400 ng/mL rhTRAIL(パネル A)、K562 細胞を 1.1 µ M Bortezomib(パネル B) でそれぞれ処理してアポトーシスを誘導した。検出試薬を加えたタイミングを 0hr とし、 各点線は Annexin V 検出試薬(発光:●)と DNA 結合試薬(蛍光:□)のシグナルが検 出され始めたタイミングを示す。 図 1. Real-time™ Glo Annexin V Apoptosis Assay の原理 RealTime-Glo™ Annexin V Assay については 7 月末発売予定 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) RealTime-Glo™ Annexin V Apoptosis and Necrosis Assay (アポトーシス& ネクローシス デュアルアッセイ) 100 回分 JA1011 80,000 1000 回分 JA1012 400,000 RealTime Glo™ Annexin V Apoptosis Assay (アポトーシス シングルアッセイ) 100 回分 JA1000 68,000 1000 回分 JA1001 340,000 Caspase-Glo® 3/7 Assay (アポトーシス:カスパーゼ 3/7 アッセイ) 10 ml (100 回分) G8091 75,000 プロメガ 高次元細胞プロジェクト 検索 図 3. LV200 を用いた Annexin V の発光イメージング HeLa 細胞にスタウロスポリン(終 濃度 1 µM)を添加し、アポトーシ スを誘導した。添加 2.5 時間(左図) および 5 時間(右図)の代表的な像 を示す。LV200(Olympus)にてイメー ジングを行い、位相差と発光の像 を重ねあわせた。<オリンパス社秋 吉様の御厚意によりデータ提供> Anx V Anx V SmBiT LgBiT 細胞膜 Anx V (発光) DNA (蛍光) ホスファチジルセリン アポートシス誘導試薬 の処理時間 細胞の状態 シグナルの変化 生細胞 初期アポトーシス 後期アポトーシス (2 次的ネクローシス) 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 A. Time (hours) Luminescence (RLU) Fluorescence (RFU) 1.5 hr 10 hr Apoptosis 2゜Necrosis Apoptosis 2゜Necrosis 0 8 16 24 32 40 48 0 70,000 140,000 210,000 280,000 350,000 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 Time (hours) Luminescence (RLU) Fluorescence (RFU) B. 8 hr 20 hr 核酸結合 蛍光色素 4 キナーゼ阻害剤スクリーニング キナーゼアッセイは RI 標識したリン酸を使う方法、リン酸化タンパク質 特異的抗体を使う方法、基質リン酸化の電荷の違いにより検出する方 法など、様々なアッセイ法が考案されてきました。プロメガはすべての キナーゼに共通の基質である ATP に着目し、反応前後の ATP 量を比較 することでキナーゼ活性を測定する Kinase-Glo® を開発、のちにこれを 改良して反応生成物の ADP を検出する ADP-Glo® を開発しました(図 1)。 ATP や ADP を検出する手法により、これまでは RI アッセイ以外では難 しかった全長タンパク質、糖や脂質のような分子を標的基質とするキ ナーゼアッセイを、ペプチドを基質とするキナーゼと同様にアッセイで きるという大きな特長があります(図 2)。またキナーゼ反応後の残存 ATP を検出する Kinase-Glo® に比べ、反応生成物である ADP を検出す る ADP-Glo® は非常に高感度であり、活性の弱いキナーゼや少ない酵素 量でも高感度なアッセイができるようになりました。ルミノメーターさ えあれば測定できる簡便さから、基礎研究から HTS まで幅広く使用さ れています。特に HTS では、擬陽性が少ないロバストなアッセイ系とし て高く評価されてきました。 また、より簡便にキナーゼ阻害剤を研究できるよう、174 種のキナーゼ について精製キナーゼ・基質・反応バッファーをセット化した Kinase Enzyme System を用意しました(KES リスト www.promega.com/a/kinase/)。 キナーゼのプロファイリング キナーゼをターゲットにした創薬では、特異性の高い化合物を見つけた い、また見つけた化合物が他のキナーゼファミリーと反応するかどう か調べたい、というニーズが高まっています。このようキナーゼファミ リーにおけるプロファイル解析系は自作するのは容易ではありません。 受託サービスという方法もありますが、受託サービスには様々なメリッ トがある一方、ちょっとやってみたい場合には利用しにくく、また化合 物を外部に出せない場合は利用できません。ADP-Glo® Kinase Enzyme System をキナーゼファミリーごとに、またはヒトの Kinome を代表する パネルにまとめてセット化 し た Kinase Selectivity Profiling System は 、 自分で簡単にキナーゼプロ ファイリングをしたいとい うニーズに応える製品です。 各酵素と基質はチューブス トリップに分注されており、 使用する際に希釈して混合 するだけで理想的なキナー ゼ活性が得られるよう調製済みです。特定ファミリーでの簡単なチェッ クから Kinome 全体の本格的なプロファイリングまで、柔軟に使い分け できる点も魅力の一つです。 細胞内での薬剤結合活性および滞留時間測定 (タ―ゲットエンゲージメント) 近年はターゲットからの解離が遅く、より長く効果を発揮する阻害剤を 目指した開発が行われています。キナーゼ阻害剤においても同様に滞 留時間(Residence time )測定のニーズが高まっています。また創薬ター ゲットとして有望なチロシンキナーゼ型受容体ファミリーは膜貫通型キ ナーゼであり、これまでは全長タンパク質でのアッセイが難しく、阻害 剤スクリーニングでは精製した活性ドメインのみ使用することが一般的 でした。かわら版秋号(www.promega.co.jp/pdf/kawara_1610_p3.pdf)で ご紹介した TE アッセイ(Target Engagement Assay [ 細胞内蛍光標識化合 物結合試験 ])を利用すれば、従来法では解析が困難であった膜貫通 型キナーゼやサイズの大きなキナーゼについても生細胞内におけるキ ナーゼ結合活性および滞留時間の測定を簡便に行うことができます。 また、TE アッセイでは Type I 阻害剤の他、Type II やアロステリック阻 害剤の評価もできることが分かっています。図 4A は様々なタイプの阻 害剤による Kinase Tracer と Abl キナーゼ結合阻害実験例です。Type I 阻 害剤の Dasatinib、Type II 阻害剤の Imatinib と Ponatinib、Type III かつアロ ステリック阻害剤である GNF2 を評価したところ、全タイプの阻害剤に おいて Kinase Tracer の結合阻害活性が観察されました。また、結合阻 害活性が報告されているキナーゼ阻害活性ともよく相関し、Dasatinib や Ponatinib では GFN2 や Imatinib に比べて強い活性を示しました。 これらの滞留時間を測定したところ、第一世代の Imatinib は添加後数十 分でプラトーに達しており比較的解離が早いことを示していますが、第 二世代の Dasatinib や Bafetinib、さらに第三世代の Ponatinib は非常に滞 留時間が長く、非常にゆっくりとした解離が観察されています(図 4B)。 簡便に滞留時間を測定できる TE アッセイが強力なツールになることは 間違いありません。 キナーゼの TE アッセイは現時点でヒトキノーム全体のうち 120 種以 上の全長キナーゼ解析システムを構築済みであり、カタログ製品化に 先立ち先行販売しております。ご興味がある方は是非お問合せ下さい (E-メール:prometec@jp.promega.com)。 ターゲットエンゲージメントが切り拓くキナーゼ標的創薬 アカデミア創薬サポートプロジェクト 近年のブロックバスターは多くが抗体医薬をはじめとするバイオ医薬品になっているとは言え、キナーゼや GPCR は創薬ターゲットとして魅力がある 分子です。実際に、2016 年 2 月の時点で開発中の低分子性抗がん剤のうち 68% がキナーゼ阻害剤であり、特にチロシンキナーゼファミリーをターゲッ トとしたものが多いという報告(1)もあり、創薬ターゲットとしてキナーゼが重要であることが分かります。特定の酵素やキナーゼファミリーに特異 性が高い化合物の探索だけでなく、新たな阻害剤評価法や評価項目も出てきており、様々なキナーゼ解析手法がとられるようになってきました。こ こでは、キナーゼ阻害剤解析や探索においてプロメガが提供する多様な解析法をご紹介します。 (1)分子標的薬開発(2016 年 2 月時点)scads.jfcr.or.jp/db/table.html 図 1. ADP-Glo® アッセイ原理 図 2. 様々な基質の ADP-Glo® アッセイデータ事例 タンパク(ERK2)、ペプチド(EGFR)、 脂質(PI3K)、糖(Glucose) 図 3. Kinase Selectivity Profiling System の酵素・ 基質ストリップ 図 4A. Type I、II 阻害剤と ATP 非拮抗型阻害剤 図 4B. 各阻害剤の滞留時間 プロメガ キナーゼのバイオロジー 検索 -1 0 1 2 0 9000 18000 27000 36000 45000 Lipid Kinase Phosphatidylinositol (lipid) Log10[PI3K p120γ], ng RLU EC50=2.8ng 9168MA Hexokinase Glucose (sugar) -4 -3 -2 -1 0 1 0 100000 200000 300000 400000 Log10[Glucokinase], mU RLU EC50=50µU 9169MA Serine-Threonine Kinase MBP (protein) -1 0 1 2 3 0 100000 200000 300000 400000 500000 EC50=77ng Log10 [ERK2], ng RLU 9170MA -2 -1 0 1 2 3 0 7000 14000 21000 28000 35000 Tyrosine Kinase Poly Glu4-Tyr1(peptide) Log10[EGFR], ng RLU EC50=7.7ng 9171MA Light 10132MA Step 1. Add ADP-Glo® Reagent. Step 2. Add Kinase Detection Reagent. Luciferase/Luciferin Convert Detect Deplete Newly synthesized ATP. ATP remaining after your reaction. Remaining ATP. ATP P P ADP P P ATP P P P ATPr P P P P ADP P P Your Reaction Reaction Products ADP-Glo® Assay ATP P P P P ATP P P P Substrate Substrate Kinase reaction ATPase reaction ATP P P P OR Pi 1 0 -6 1 0 -4 1 0 -2 1 0 0 1 0 2 0 5 1 0 1 5 2 0 2 5 GNF2 Imatinib dasatinib Ponatinib EC₅₀ GNF2 0.1055 Imatinib 0.4556 dasatinib 0.006036 Ponatinib 0.006697 NanoLuc®-Abl kinase Live Cells [Compound], µg BRET Ratio (mBU) 20 40 60 80 100 120 -20 0 20 40 60 80 100 120 Vehicle Imatinib Dasatinib Ponatinib Bafetinib Abl kinase Abl Kinase Time (m) Normalized Response 5Promega KAWARABAN 「高感度」について プロメガの発光試薬はどのルミノメーターでも測定できるように発光シ グナルを大きくするように設計されていますが、試薬側の改良に限界が あるのも事実です。典型的なも のがレポーターアッセイであり、 細胞内タンパク質の発現検出を 得意とするルシフェラーゼレポー ターと蛍光レポーター GFP をプ レートリーダーで測定するとルシ フェラーゼの感度の良さがわかり ます(右図)。しかし、感度の高 いレポーターを選択しても細胞 数、トランスフェクション効率な どにより発現量自体が少なけれ ば試薬の性能ではカバーできな い場合もあります。このような場合でも高感度な検出装置であれば結果 を得ることができますが、低感度装置では十分なシグナルが得られない ため実験条件の見直しに時間を割かなければなりません。プロメガは このような問題を回避するために、フォトンカウンティング法を採用し、 高感度化を実現しました。 「ワイドダイナミックレンジ」について 新しいアッセイ系のため発光量が 予想以上に高く検出限界を超え てしまうなど、先の「高感度」と は逆のケースを考えます。このよ うな場合はアッセイを見直すのが 一般的ですが、ダイナミックレン ジが狭い装置では Gain を変える ことにより測定を可能にする方法 もあります。Gain の変更は一見良 さそうですが、実験を変更する度 に Gain を調整する必要がありま す。また、装置によっては、最大 発光ウエルを指定して Gain をア ジャストすることにより測定しま すが、実際には指定したウエルよ り高発光量のウエルがあると検 出上限を超え、そのウエルは諦 めるか、再度 Gain 調整しなけれ ばならないなど煩わしさがありま す。プロメガのルミノメーターで は高発光量時には電流測定法、 微量検出時には最高感度が得ら れるフォトンカウンティング法を 併用し、ダイナミックレンジ8桁 以上を実現しました。ダイナミッ クレンジの広い測定器なら発光量 の高いサンプルを希釈したり、機 器の調整などを行うことなくすぐ に測定することが可能なのです。 「低クロストーク」について フラッシュタイプのルシフェラーゼアッセイ試薬を使いやすくするために、 長時間発光(グロータイプ) を生じる試薬が開発され、ハ イスループットスクリーニン グに適した高感度アッセイと して幅広い用途に使われるよ うになりましたが、測定して いない隣のウエルの光まで も測定してしまうクロストー クというグロータイプ発光 特有の問題も同時に生まれ ました(右図)。プロメガで はこれを装置側で防ぐためにドームマスキング / デュアルマスキング方 式を開発し、クロストークを最小限に押さえることに成功しました。ク ロストークは左右上下斜めの少なくとも 8 ウエルからの影響があり、こ れを計算で補正することは容易ではありません。そういったことからも、 クロストークの少ない装置を用いることはとても重要です。 Signal[RLU] Luciferase conc. [log] A. 他社 1.0E+01 -14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 1.0E+02 1.0E+03 1.0E+04 1.0E+05 1.0E+06 1.0E+07 1.0E+08 1.0E+09 1.0E+10 1.0E+11 gain 1 gain 10 gain 100 マイクロプレートを用いたアッセイに多く用いられる測定法として、吸光度、蛍光、発光を用いた方法が一般的です。それぞれの測定技術は、試薬およ び装置の発展のもと、それらを最大限利用することにより、使いやすいものになります。ルシフェラーゼを用いた発光の場合、本来は発光時間が一瞬で あったものを長時間光らせるという工夫が試薬の大きな発展であり、また装置はより高感度の測定が可能な検出器を利用することなどが挙げられます。 プロメガが考える優れた検出システムとは? • 優れた装置 ▶ 最適化が不要で、すぐに信頼できる正確なデータが得られること • 優れた試薬 ▶ サンプルに影響を与えず、より簡単により多くの情報が得られること 今回は発光アッセイを最大限に利用するために有効な、高感度、ワイドダイナミックレンジ、低クロストークについて考えます。 東京大学大学院 農学生命科学研究科 応用生命化学専攻 栄養化学研究室 小島 拓哉 先生 種々の遺伝子断片を組み込んで、いざレポーターアッ セイを行っても、必ずしも期待通りの結果が得られ ず、頭を抱えてしまうことが今までに多々ありました。何が問題か、コン ストラクト?、使用している細胞?、トランスフェクション効率?、など と逐一検証し、期待される(?)結果に結びつくよう試行錯誤しましたが、 大元、ルミノメーターの性能に関しては、頭の片隅に追いやって使用し ておりました。 こうした中で、RentaMAX を通じて GloMax® Discover を使用する機会を 得、これは試しにと、なかなか再現性が得られなかったアッセイ系を再 検討した結果、微量な差異を再現性良く検出することが出来ました。今 までの再検証に掛かった時間を嘆くとともに、GloMax® を用いたアッセ イ結果から次への検証を進める実験が組める、ちょっとしたワクワク感 も得られ、機械選びはやはり大切だなーと実感した次第です。 ダイナミックレンジが広い事、発光、蛍光、吸光測定への対応性、欲を 言えば切りが無くなりますが、一台でこれらの点をカバーする GloMax® Discover の利便性は、新たなアッセイ系を組み立てる際にとても有効で あり、実験を進める上で賢い選択になると思われます。ということで新 たな実験を進めたいと思います。 RentaMAX で機械選びの大切さを実感 お客様 の声 図 1. GFP と Fluc の発光強度の比較 GFP および Fluc の PBS 溶液を GloMax® で 測定した。GloMax® 以外の装置でも同様の 結果を得た。 図 3. クロストークの説明 A. 隣のウエルから直接検出器に届くクロストーク B. plate の壁を通して測定ウエルを光らせるクロ ストーク 図 4. プロメガのマスキングシステムによるクロストークの低減 図 2. GloMax® のダイナミックレンジと他 社装置のゲイン調整イメージ パネル A. ユーザー指定の最大発光ウェル ①に合わせて gain を 10(オレンジ)に設定、 測定上限を超えるウェル②が存在した場 合、Gain を 100 に変更③することにより ウェル②が測定範囲内に入り測定ができる ④。パネル B. GloMax® は 8 桁以上のダイナ ミックレンジがあり、Gain 調整の必要があ りません。 プレートリーダー論: プロメガが求め、磨き上げる、真のスペック A1 0.25% 0.20% 0.15% 0.10% 0.05% 0.00% A2 100% 100% A3 C1 C2 C3 隣接するウェルへの発光漏れ込み度合 (A2, C2 ウェルが発光している) :GloMax® Discover :他社の上位機種 A B 検出器 測定ウエル RentaMAX プログラム を通じて、プロメガのルミノメーター のパフォーマンスをすぐ に体験いただけます。 RentaMax 検索 Signal Intensity (RFU / RLU) GFP / Fluc conc. (M) GFP / Fluc in PBS 0 1E-12 1E-11 1E-10 1E-09 1E-08 1E-07 1E-06 1E-05 1E+1 1E+2 1E+3 1E+4 1E+5 1E+6 1E+7 1E+8 GFP Luc ① ③ ② ④ Signal[RLU] Luciferase conc. [log] B. GloMax(プロメガ) 1.0E+01 -14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 1.0E+02 1.0E+03 1.0E+04 1.0E+05 1.0E+06 1.0E+07 1.0E+08 1.0E+09 1.0E+10 1.0E+11 GloMax 6 RNA 抽出:FFPE 検体から自動抽出した RNA を用いた融合遺伝子の検出 これまでホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体は、固定の影響か ら分子生物学的解析には不向きな検体と言われてきました。しかし、患 者さんから採取される組織検体のほとんどは FFPE として扱われます。 FFPE は、形態情報だけではなく治療法とその効果や予後など、患者さん 個々の臨床情報を有する貴重な医療資源となるので、FFPE を用いた遺 伝子実験の成功は、標的遺伝子の臨床的意義についての検討に必須で す。さらに、レーザーマイクロダイセクション(LMD)法を用いて標的細 胞や組織だけを回収すれば、組織や細胞の形態と、分子の状態をより 厳密にリンクさせた解析が可能となります。研究レベルでの RNA 解析は、 マイクロアレイや定量 RT-PCR 法による発現定量解析が主体となるかと 思われますが、臨床の場においての RNA 解析は、特に腫瘍の鑑別診断 に重要な融合遺伝子の検出に用いられます。臨床現場での遺伝子解析 は、作業の標準化や精度管理の点からも、機械化、自動化の普及が望 まれます。 今回、四肢に発生する骨軟部腫瘍の中で 3 番目に多く、SYT(SS18) -SSX 融合遺伝子が責任遺伝子として同定されている滑膜肉腫症例の FFPE を対象として、Maxwell® を用いた RNA の自動抽出を行い、同融合 遺伝子の検出を行いました(図 1, 2)。 SYT(SS18)-SSX 融合遺伝子の 迅速な検出は治療法の決定や予後予測のための鑑別診断に有用である ことが示されました。 NGS の普及によって、FFPE からの DNA、RNA 解析は患者さんの個別化 治療の実践や新規治療薬の開発にますます必須となってくると考えられ ます。解析の Key となる Pre-analytic phase とされる検体処理が、解析方 法の進歩に追随していくことが求められます。 日本大学 医学部 腫瘍病理学 中西陽子 先生 図 1. FFPE から回収したサンプルの大きさ 日常的に病理で薄切される切片の厚さは 4 µmです。この切片を脱パラフィンして、図の ように大きさを変えて腫瘍細胞をメスで削り取って回収しました。チューブに入れて、前 処理を行います。腫瘍細胞含有量を増やすためには、切片の状態で脱パラフィンを行っ てから標的部位の組織や細胞を回収すると前処理の手間も減り一石二鳥です。特に RNA の解析では検査対象となる腫瘍組織や腫瘍細胞のみを回収することは重要で、標的の領 域が図の赤枠のように大きければ LMD でなくてもメスで十分に回収可能です。 図 2. FFPE から回収したサンプルの大きさおよび抽出法の違いによる RT-PCR の結果の比較 吸光度で RNA を 定 量 す る と フ ェ ノ ー ル 混 入 の 影 響 か、AGPC(acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction)法が最も RNA 回収量が多く見られました。しか し、実際に RT-PCR を行ってみると、今回試したビーズ法による自動抽出が、標的融合遺 伝子転写産物を含めて最も良く抽出できていることが示されました。ただし、断片化の 影響も考慮し、PCR 産物が 100-150 bp 程度になるようなプライマー設計も必要です。定 量 RT-PCR でも同様の結果が得られています。 DNA 抽出:FFPE 検体からの DNA 抽出キットの使い分け Maxwell® には、FFPE から DNA を抽出するキットが 2 種類用意されてい ます。右表に示すように、それぞれのキットには主に前処理において大き な違いが有ります。Maxwell® RSC DNA FFPE Kit – PKK, Custom(カタログ 番号 AX2500)では、FFPE をそのまま Proteinase K 反応液に加え、70 ℃ で一晩インキュベーションした後にこの溶解液を Maxwell® 専用カート リッジに加えるだけです(脱パラフィン処理・脱クロスリンキング処理不 要)。前処理が飛躍的に簡略化された本キットは、多くの FFPE からルー チンに DNA 抽出を行い、TaqMan 法やサンガーシークエンスのような PCR による変異解析を目的とする研究者の方々に最適です。一方、 Maxwell® RSC FFPE DNA Kit(カタログ番号 AS1450)は、脱パラフィン処理・ 脱クロスリンキング処理などの前処理を必要とします。これらの前処理 により高品質な DNA を高収量で得ることができます。このキットでは、 FFPE の処理において、キシレンのような有害な有機溶剤は不要なため、 より安全にご使用いただけます。このように抽出された高純度かつ高収 量の DNA は、NGS を始めとするあらゆるアプリケーションに適合します。 遺伝子関連検査を支える 核酸自動抽出装置 Maxwell® RSC, FFPE 編 関連製品 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) Maxwell® RSC Instrument 1 式 AS4500 2,800,000 Maxwell® RSC RNA FFPE Kit 48 回分 AS1440 41,000 Maxwell® RSC DNA FFPE Kit – PKK, Custom 48 回分 AX2500 41,000 Maxwell® RSC DNA FFPE Kit 48 回分 AS1450 41,000 2 つの FFPE DNA 抽出キットの特徴比較 製品名 DNA FFPE Kit – PKK, Custom DNA FFPE Kit カタログ番号 AX2500 AS1450 DNA 収量 低い 高い 前処理の工程 極めて簡単 一般的 Proteinase K を加えて、70℃で 一晩のインキュベーション 脱パラフィン、脱クロスリンキング、 Proteinase K 処理、RNase A 処理 推奨の用途 主に PCR や qPCR NGS を含む全てのアプリケー ション 収量(ng) 5 µm × 4 枚あたり 5 µm × 1 枚あたり 肝臓 304 50-500 脾臓 414 1,500-2,250 脳 193 100-200 イントロダクション 一般的に摘出された組織検体は、病理診断のため、ホルマリン固定・パラフィン包埋の処理を経て、FFPE として加工 されます。近年では、病理診断で使用した FFPE を材料とした遺伝子検査が増加しています。FFPE は調達しやすく、 かつ比較的安定的に保存できる検体であることから、病理診断後も長期間保存されていることが多く、新たな検査の たびに組織を採取する必要がなくなるなど、研究目的としても有用なサンプルとして広く利用されるようになりました。 このように、遺伝子検査のためのサンプルとして FFPE の価値が再認識されると同時に、メーカーからも様々な FFPE 専用の核酸抽出キットが発売され、誰でも比較的簡単に核酸を精製することができるようなりました。しかし、 FFPE から核酸を抽出する手順において、脱パラフィン処理、脱クロスリンキング処理など煩雑な前処理プロトコルや、 実験者の技量によるばらつきに悩んでいる方も多く存在します。本稿ではこれらの諸問題を解決する自動核酸抽出 装置 Maxwell® RSC Instrument を用いた RNA の抽出例について日本大学の中西先生にご執筆いただき、FFPE 対応 DNA 抽出キットの特性についてもご紹介いたします。 1 section 3mm × 3mm 10mm × 10mm 2mm × 2mm 5mm × 5mm 1mm × 1mm 自動抽出 カラム抽出 AGPC 法 www.promega.co.jp/rentamax 機器貸出プログラム RentaMAXで自動精製を体験してみませんか? Maxwell® RSC 7Promega KAWARABAN プロメガの提案力で皆様の研究を レベルアップ キャンペーン レベルアップ製品を今ならどなたでも特別価格! www.promega.co.jp/lecture/ あなたの研究室まで NanoLuc® の基礎をご説明に伺います! www.promega.co.jp/onsite_seminar/ セミナーの要旨・登録は セミナーを 100 倍楽しく聞くために NanoLuc 参加登録 8 人の日本人研究者が語る ® の 無限の可能性 受付中 レポーターアッセイ 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) 特別価格(¥) デュアルアッセイ試薬 + コントロールベクターセット Nano-Glo® Dual-Luciferase®/ pNL 1.1.TK Bundle 1 セット N1521 80,000 40,000 Nano-Glo® Dual-Luciferase®/ pNL1.1 PGK Bundle 1 セット N1531 80,000 40,000 Nano-Glo® Dual-Luciferase®/ pGL4.54 [luc2/TK] Bundle 1 セット N1541 80,000 40,000 Nano-Glo® Dual-Luciferase®/ pGL4.53 [luc2/PGK] Bundle 1 セット N1551 80,000 40,000 試薬(シングルまたはデュアル) Nano-Glo® Luciferase Assay 10 ml N1110 23,000 18,000 Nano-Glo® Dual-Luciferase® Reporter Assay System 10 ml N1610 39,000 31,000 DNA & RNA 精製 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) 特別価格(¥) RNA 精製 Reliaprep™ RNA Cell Miniprep System 50 回分 Z6011 32,000 25,600 Reliaprep™ RNA Tissue Miniprep System 50 回分 Z6111 34,000 27,200 Reliaprep™ FFPE Total RNA Miniprep System 100 回分 Z1002 92,000 64,400 ReliaPrep™ miRNA Cell and Tissue Miniprep System 50 回分 Z6211 45,000 31,500 DNA 精製 Reliaprep™ gDNA Tissue Miniprep System 100 回分 A2051 51,000 35,700 Reliaprep™ Blood gDNA Miniprep System 100 回分 A5081 45,000 31,500 Reliaprep™ FFPE gDNA Miniprep System 100 回分 A2352 47,000 32,900 HaloTag® によるタンパク質標識 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) 特別価格(¥) 蛍光標識リガンド HaloTag® TMR Ligand 15 µl G8252 51,000 35,700 HaloTag® Alexa Fluor® 488 Ligand 15 µl G1002 51,000 35,700 HaloTag® Oregon Green® Ligand 15 µl G2802 51,000 35,700 プルダウン & 精製 HaloTag® Mammalian Pull-Down System 24 回分 G6504 64,000 44,800 HaloLink™ Resin 5 ml (settled resin 1.25 ml) G1912 34,000 23,800 ※ RNA のキャッピングにはカタログ番号 P1300 と P1711 をご利用ください。 (カタログ番号 P1320 でのキャッピングは推奨いたしません) In vitro 転写( RNA 合成) 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) 特別価格(¥) T7 RiboMAX™ Express Large Scale RNA Production System 50 回分 P1320 50,000 30,000 RiboMAX™ Large Scale RNA Production System-T7 50 回分 P1300 40,000 28,000 Ribo m7G Cap Analog 10 A254 Unit P1711 28,000 19,600 タンパク質相互作用解析 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) 特別価格(¥) NanoBiT™ PPI MCS Starter System 1 システム N2014 180,000 108,000 NanoBiT™ PPI Flexi® Starter System 1 システム N2015 180,000 108,000 プラスミド精製 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) 特別価格(¥) PureYield™ Midi & Maxi Pump Set 1 セット JKC005 178,000 80,000 Welch Vacuum Pump, for Japan Electrical 1台 A6724 90,000 70,000 トランスフェクション 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) 特別価格(¥) 困難な細胞用試薬 ViaFect™ Transfection Reagent 0.75 ml E4981 59,000 41,300 2 × 0.75 ml E4982 95,000 66,500 siRNA および DNA 共用試薬 MultiFectam 2 × 0.33 mg ETF2000 22,000 11,000 6 × 0.33 mg ETF5000 55,000 27,500 RT & qPCR 製品名 サイズ カタログ番号 価格(¥) 特別価格(¥) インターカレーター法 GoTaq® qPCR Master Mix 200 回分 A6001 51,000 25,500 1000 回分 A6002 211,000 105,500 GoTaq 2-Step RT-qPCR System 50RT/200qPCR 反応分 A6010 62,000 31,000 GoTaq® 1-Step RT-qPCR System 200 回分 A6020 75,000 37,500 プローブ法 GoTaq® Probe qPCR Master Mix 200 回分 A6101 19,000 9,500 1000 回分 A6102 79,000 39,500 GoTaq® Probe 2-Step RT-qPCR System 50RT/200qPCR 反応分 A6110 38,000 19,000 GoTaq® Probe 1-Step RT-qPCR System 200 回分 A6120 61,000 30,500 第 2 弾 好評につき キャンペーン 期間:2017 年 7月 10 日~ 9 月 25 日 レベルアップアンケート & プレゼントはこちらから ※当選者の発表は 10月以降の賞品発送を もって代えさせていただきます。 www.promega.co.jp/2017quest/ テクニカルサービス ● Tel. 03-3669-7980 / Fax. 03-3669-7982 ● E-Mail : prometec@jp.promega.com PK1707-02B 販売店 日本語 Web site:www.promega.jp プロメガ株式会社 本 社 〒103-0011 東京都中央区日本橋大伝馬町14-15 マツモトビル Tel. 03-3669-7981/Fax. 03-3669-7982 大阪事務所 〒532-0011 大阪市淀川区西中島6-8-8 花原第8ビル704号室 Tel. 06-6390-7051/Fax. 06-6390-7052 ※製品の仕様、価格については2017年7月現在のものであり予告なしに変更することがあります。