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じつは難しいイチゴの葉からの RNA 抽出

作物の病害虫防除は殺菌および殺虫性の化学合成農薬に大きく依存しているが、国民の環境保全意識の高ま りから環境低負荷型の病害防除技術の開発が求められている。一方で、病害虫の薬剤耐性の発達が深刻化し ており、この状況を放置すれば使用できる薬剤の枯渇が懸念されている。 このように病害虫により食料の安定供給が脅かされている中、早急な対策が求められている。そこで、植物が 本来備えている病原体に対する抵抗力(植物の免疫力)を人為的に高める技術を開発し、病害の感染を防ぐ革 新的な技術の開発をめざしている。特に、国内外で商品価値が高いイチゴについて、抵抗性誘導剤の開発によ る重要病害のイチゴ炭疽病の防除は急務であるが、イチゴの誘導抵抗性(免疫)に関する情報および知見は 十分ではない。そこで、イチゴのゲノム情報を利用し、イチゴの抵抗性誘導機構を遺伝子発現レベルで解析す るため、イチゴから高品質の RNA を調製する簡易抽出法を紹介する。本法により、得られた RNA からマイクロ アレイ、リアルタイム PCR および RNA-Seq など多岐にわたる遺伝子発現解析が再現よく実施できている。 上記のように調製後の RNA 濃度が十分に高く、さらに高品質であるのみならず、 Maxwell® には優れた特長があります。1 点目は、試薬および機器の操作が非 常に単純である点です。また、専門知識を有していない実験補助員でも容易 に使えることは大きなメリットです。2 点目はほぼメンテナンスが不要なことで す。使用間隔が開いた場合、どうしても機器には不具合が起こりがちです。 Maxwell® は非常に単純な作りのため、久しぶりに使うときでさえ、メンテナン スを行うことなく、すぐに立ち上げができます。同様の理由から、日常のメン テナンスも拭くだけととても簡単です。最後に、機器のサイズが非常に小さい ことが挙げられます。A4 サイズの紙より少し大きいぐらいですから、どこにで も置けますし、一人でも簡単に移動させることができます。非常に便利な機器 なので、ご利用いただく価値のある製品としてお薦めします。 じつは難しい イチゴの葉からの RNA 抽出 岡山県農林水産総合センター 生物科学研究所 植物活性化 G 鳴坂 真理 先生 • イチゴの組織は RNA 抽出を阻害し、その後の実験操作でも阻害の原因とな る様々な成分を含んでいる。特に、タンニンを含むポリフェノール類や多糖 類を多く含むことから、一般的な抽出方法や市販の抽出キットでは、リアル タイム PCR、RNA-Seq およびマイクロアレイ等の実験に使用できる高品質の RNA の抽出は困難である。 • 特別な技術や準備を必要とせず、専門知識を有していない実験補助員など でも簡単に短時間で高品質な RNA を抽出できる方法が望ましい。 • コルクポーラー No.3 を用いて 3-4 枚の葉片をサンプルとする(右上写真・図)。 サンプル量が多すぎると、PCR 阻害の原因となる成分の混入を引き起こす。 • なるべく若い葉からサンプルリングする。特に圃場栽培のイチゴでは、直径 5 cm 程度の展開第 1 葉がよい。 • 葉の部位によって遺伝子発現が異なるので、サンプリング位置を変 え、各小葉からまんべんなくサンプリングする。 • 抽出前の前処理として、サンプルを液体窒素で凍結させて、乳鉢 / 乳棒またはビーズ破砕機でパウダー状になるまで破砕する。 イチゴの葉から、リアルタイム PCR、RNA-Seq、マイクロアレイに適した RNA を抽出するためのポイント ここ 3 3 を 3 解決! 3 333 プロトコール 3 ビーズ破砕機 コルクポーラー No.3 4 枚を 2 mL チューブへ 5 cm 第 1 展開葉を 3-4 枚程度をサンプリングすることにより、100 ng/µL 以上の濃度の高品質な RNA を抽出することができました。このレベ ルの高濃度な RNA を得ることができれば、リアルタイム PCR や RNASeq へ適用しやすくなります。 表 -1 イチゴ葉ディスク数による total RNA の収量および純度(第 2 展開葉より調製) 2 枚 3 枚 4 枚 濃度(ng/µL) 260/280 濃度(ng/µL) 260/280 濃度(ng/µL) 260/280 46.2 1.86 76.6 1.93 143.9 1.94 45.7 1.95 80.9 1.90 147.5 1.94 46.5 1.91 81.9 1.92 163.7 1.92 平均 46.1 1.91 79.8 1.92 151.7 1.93 コルクポーラー No.3 を用いてイチゴ葉(品種:‘女峰’)からディスクを作製し、total RNA を Maxwell® RSC 装置 で調製した。 表 -2 イチゴの葉位の違いによる total RNA の収量および純度(ディスク 4 枚) 第 3 展開葉 第 4 展開葉 濃度(ng/µL) 260/280 濃度(ng/µL) 260/280 141.20 1.79 812.40 1.90 182.60 1.79 636.30 1.94 187.80 1.79 707.70 1.95 平均 170.53 1.79 718.80 1.93 コルクポーラー No.3 を用いてイチゴ葉(品種:‘女峰’)からディスクを作製し、total RNA を Maxwell® RSC 装置 で調製した。 ラボプロトコール 実施例 サンプリング コルクポーラー No.3 を用いて 3 ~ 4 枚の葉片をサンプリングし、 2 ml チューブに移す。すぐに液体窒素で凍結する。 1 サンプル破砕 凍結した状態を保ちつつ、ビーズ破砕機または乳鉢 / 乳棒でパウダー 状になるまで破砕 2 RNA 抽出:精製 3 から 400 µL を Maxwell® RSC カートリッジ(カタログ番号 AS1340) に加え、核酸自動抽出を実施 4 品質チェック • NanoDrop での測定 • リアルタイム PCR、RNA-seq、マイクロアレイでの解析に使用 5 RNA 抽出:前処理 • 氷冷した 1-thioglycerol / Homogenization Buffer 600 µL を加え、よく ボルテックスで撹拌 • 遠心(15,000 rpm、4℃、2 分) • 上清 400 µl を新しいチューブに移し、Lysis Buffer 200 µL を加え、 1 分間のボルテックスで撹拌 3 特集 Maxwell® RSC 使いの達人に教わる困難サンプルの鉄板ラボ内プロトコール 5Promega KAWARABAN