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エピジェネティック制御タンパク質の『ライブセル解析ツール』

エピジェネティック制御因子のライブセル“タンパク質間相互作用解析” 酵素活性を持たないタンパク質の解析手法として特にライブセルでの タンパク質相互作用解析は非常に有効な手段です。研究レベルでのタン パク質相互作用解析は FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer) の系が良く使われますが、細胞自身や薬剤の自家蛍光がバックグラウン ドとなり、十分な定量性が得られません(かわら版夏号 p7)。この問題 を解決するために優れた定量性に定評のある発光アッセイの利点を生 かして、FRET のドナーの蛍光物質をルシフェラーゼにした BRET (Bioluminescence RET)に期待が寄せられました。しかしもともと低い 発光シグナルの一部のエネルギーだけが転移した BRET シグナルは更に 小さく、高感度な装置でも検出が難しい系となってしまいました。 この状況を一変させたのが、プロメガの非常に明るい NanoLuc® を利用 した NanoBRET™システムです。従来の BRET で問題だったシグナルの 低さは NanoLuc® によって改善され(図 1)、また細胞や薬剤のもつ蛍光 の影響がなく、発光法の特長である高い定量性があります。 この NanoBRET™システムを用いることにより、これまで解析が難しかっ た生細胞での全長タンパク質を用いたタンパク質相互作用の解析が可 能になりました。 図 2 にヒストンのアセチル化部位に結合するブロモドメインタンパク質 の一つ、CBP とヒストンの NanoBRET™アッセイ模式図を示しました。 CBP は約 260kDa の巨大なタンパク質であり、従来の方法では全長 CBP とヒストンの相互作用を検出することは困難とされてきました。そのた め CBP のブロモドメイン(BD)のみを使用して CBP -ヒストン結合阻 害剤が探索され、SGC-CBP-30 が見つかったのですが、実はこの化合物 は全長 CBP とヒストンの結合は阻害しないことが分かりました(図 3)。 生体内の CBP はもちろん全長タンパク 質ですので、実際に薬として使えるか どうかはやはり全長タンパク質で評価 することが重要です。また NanoBRET™ システムで新しい阻害剤を評価した論 文もすでに多数報告されています。 エピジェネティック制御因子のライブセルにおける“ 化合物相互作用解析” ところで、セルフリーアッセイで見つけた阻害剤はどのような手法で解 析していますか? IC50 やタンパク質との解離定数(Kd)を測定するだけ でよいのでしょうか?近年、薬剤の有効性に標的タンパクとの結合の非 平衡状態での結合-解離が影響すること、特に Residence time(滞留時 間)が重要な指標となることが明らかになってきました。また、単なる タンパク質との結合・解離速度だけでなく膜透過速度やプロドラッグの 場合は細胞内での代謝速度も合わせて検討する必要があり、ここでも セルフリーアッセイからライブセルアッセイへとニーズがシフトしていま す。ライブセルでの Residence time 測定に有用なのが、BRET を用いた 細 胞 内蛍 光 標 識 化合 物 結 合 試 験(Target Engagement、図 4)です。 Target Engagement では BRET シグナルの増加速度によりタンパク質と化 合物の解離速度が分かります。 図 4 では、HDAC1-NanoLuc® 融合タンパクを発現させた細胞にあらかじ め、SAHA、Mocetinostat, FK228 処理を行い、洗浄後に Tracer (SAHA 誘 導体)を添加して BRET を測定しました。HDAC1 との解離が速ければ BRET シグナルが速く増加します。SAHA は Tracer 添加 20 分後にほぼプ ラトーに達しました。これは Tracer の膜透過時間と一致しており、 SAHA の早い解離を示しています。一方、Mocetinostat は解離が遅いも のとして報告されていますが、BRET シグナルもゆっくりと増加していま す。また、プロドラッグである FK228 は、Mocetinostat よりもさらにゆっ くりとした解離が観察されました。FK228 はがん細胞に対してゆっくり と長く生理活性を示すことが知られており、NanoBRET™の結果もこの 性質に一致したものとなっています。 前回に続き、今回はライブセルでのアッセイに焦点を当てました。エピ ジェネティクス研究は発展がめざましい分野の一つであり、今後も新た なターゲットが続々と見つかってくることでしょう。プロメガも独自テク ノロジーを生かした新たなアッセイを提供し続けます。次なる新テクノ ロジーをお楽しみに! エピジェネティック制御タンパク質の『ライブセル解析ツール』 アカデミア創薬サポートプロジェクト エピジェネティック制御にかかわるタンパク質は、主に DNA やヒストンをメチル化・アセチル化修飾する「ライター」酵素、これらの修飾を除去する「イ レイサー」酵素、そして DNA・ヒストンの修飾部位と結合する「リーダー」タンパク質が知られており、これらが相互作用しながらエピジェネティック な制御機構を支えています。このうち「ライター」と「イレイサー」は酵素であるため、前回ご紹介したような精製酵素アッセイや細胞を用いて活性 調節化合物の探索、解析が 進められてきました(HDAC 阻害剤ボリノスタット [SAHA] など)。一方、酵素ではない「リーダー」タンパク質は解析手法 が少なく、特にライブセルでの解析やスクリーニングに適した方法がありませんでした。本稿ではタンパク質間相互作用を検出する最新の NanoBRET™ 法によるエピジェネティック制御タンパク質のライブセル解析ツールをご紹介します。 プロメガ エピジェネ 検索 図 3. CBP の構造および全長 CBP/ CBP ブロモドメイン-ヒストン結合における阻害剤の効果 図 1. NanoBRET™システムと従来法 BRET の比較 ベクターを導入した細胞内で発現した Nluc 融合タンパク質(FRB-Nluc)と低分子蛍光 618 リガンドが結合した HT(HaloTag® )融合タンパク質(FKBP-HT)が近接すると BRET が起こる(この系ではラパマイシンの添加により FRB: FKBP の相互作用が促進:左図)、 低分子蛍光 618 リガンドはタンパク質発現後に細胞へ添加する細胞透過性の蛍光試薬。 FKBP-YFP と FRB-Rluc8 による BRET システムとのデータ比較(右図)。 Histone H3 or H4 BRET NanoLuc HT CBP Ac K 図 2. NanoBRET™による Histone - CBP 結合検出 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5 7.5 8.5 9.5 A. B. 12399MB Corrected milliBRET Ratio CBP–30 Inhibitor [µM] CBP (Bromodomain) with Histone H3.3 0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 100 IC50 = 1.05µM Corrected milliBRET Ratio CBP–30 Inhibitor [µM] Full-Length CBP with Histone H3.3 0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 100 IC50 = NA IC50 consistent with results from in vitro assays Inhibitor developed against domain alone is ineffective at disrupting interaction of full-length protein 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 Nluc : HT-618 Ruc8 : YFP Rapamycin (nM) Signal-to-Background Ratio 0.0001 0.01 1 100 10,000 NLuc HT NLuc FKBP FKBP HT FRB FRB 610nm BRET Rapamycin HT ligand 20 40 60 80 100 120 0 20 40 60 80 100 Time (m) Vehicle SAHA Mocetinostat FK228 Residence Time: HDAC1 Normalized BRET Target Target Target Drug Tracer Luc Luc Saturate w/ test ligand Wash Add Tracer Measure BRET(real time) Luc 今ならエピジェネティクス関連タンパク質を含むペアセット 47 種を特別価格でご提供!(2016 年 12 月 22 日まで) 詳しくは www.promega.co.jp/kawarabancamp/ をご覧ください。 エピジェネティクス関連キット 100 種以上! プロメガでは 100 近いエピジェネティクス関連タンパク 質ペアのアッセイが構築済みなのですぐにアッセイを始 められます(QR コードよりご覧ください)。 ※関連する論文など詳細についてはお問合せください。 図 4. タンパク質と化合物の結合検出、 Residence Time 測定 3Promega KAWARABAN