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テックの一言コラム_2015年8月号 これから創薬を始める方へ ~ N エヌ =1 イチ の恐怖 ! ~

これから創薬を始める方へ[Vol. 3] ~ N エヌ =1 イチ の恐怖 ! ~ 2015 年 8 月号 いわゆる High Throughput Screening(HTS)で行われるアッセイは 通常、1 サンプル(化合物)につき 1 wel(l N=1)で行います。 N=2 あるいは N=3 で行われることは極めて稀です。 アッセイの結果、Hit かどうかの判断をします。たとえば阻害剤 探索の場合、仮に Hit としてのクライテリア(判定基準)を 50% 阻害と設定した場合、45% 阻害を示したものを捨ててしまって もいいのか。もしかして N=3 でアッセイして平均したら 55%(45, 58, 62%)阻害で、実は新規発見だったなんてことになるかもし れません。これぞまさに、N エヌ =1 イチ の恐怖。 このようなことをできる限り少なくするために、ばらつきの少な い、Z’の大きいアッセイ系であることが望ましいと考えられます。 N=3 でアッセイした濃度依存性曲線から IC50 算出実験を 3 回 行っての平均…. とは対極です。 ばらつきの小さい実験を組み立てる一つの方法が、ホモジニア スなアッセイを作ること。ホモジニアスという言葉はあまり正確 ではなく、add-read あるいは mix and measure が正しいかもしれ ません。濾過、洗浄といった分離操作の入らないアッセイ系です。 ホモジニアスなアッセイ系ですと、実験操作の観点からは、分 注操作のばらつきのみがアッセイ系のばらつきの主因ですので、 ばらつきが少ない系が構築できます。 ホモジニアスの他のメリットはアッセイ系のミニチュア化が容易 になり、簡便化とスピードアップが可能になることです。ミニチュ ア化の最大のメリットは、一番貴重なサンプルを最低限にでき るところにあります。こんな背景のもと、多くのホモジニアスな アッセイ手法が確立されています。 ところが、ホモジニアスアッセイの選択肢が増えるに従い、ホモ ジニアスアッセイにおける注意事項が、忘れ去られていることが あります。たとえば、1990 年代前半には普通に使われていたラ ジオアイソトープを用いたフィルトレーション法。濾過操作によ り、検出の段階ではサンプルは洗い流されていて存在しません。 したがってサンプルは検出には影響を与えません。ところがホモ ジニアスなアッセイ系では、検出のステップでもサンプルが存在 します。そこで何が起こりうるか、を知っていることが重要です。 蛍光法でのホモジニアスアッセイの場合。もっとも問題になるの が化合物の自家蛍光です。蛍光法は感度が高い測定法ですが、 これは目的とする蛍光物質以外のもの、つまり、サンプル自体 の蛍光にも感度が高いことを意味します。阻害剤の場合、薬剤 の入ったウェルのシグナルが、コントロールよりもはるかに高い といった結果になることさえあります。医薬品候補となる化合 物は一般的に低波長に吸収があり、蛍光も比較的波長が短いた め長波長の蛍光物質を検出に用いるのも自家蛍光を回避する一 法です。この他蛍光の問題点を工夫した技術もありますが、蛍 光物質あるいは測定装置が特殊なものになります。 次はクエンチングです。励起光が蛍光物質に届くまえに、ある いは蛍光 / 発光が検出器に届くまえにサンプルが光を吸収して しまういわゆるカラークエンチング。これは光吸収の問題で、吸 光度測定が蛍光に比較して感度が悪いのと同様、サンプルの濃 度が高い場合に影響を受けます。このカラークエンチングは測 定前にウエルの色を見ると予想がつくことがあります。 もう一つがケミカルクエンチング。検出反応系への影響(多くの 場合は阻害)です。たとえば検出反応に酵素を用いていれば、 検出酵素阻害剤の影響です。ある目的の酵素の阻害剤探しをす る際、目的の阻害剤が存在するのであれば、検出に用いる酵素 の阻害剤がないとは言い切れません。また検出系の反応時間等 も長ければながいほど、影響が出る可能性も高まります。こう いった問題は、サンプルの濃度は当然のこと、ライブラリーの 性格にも依存するかもしれません。 こうしたことによる偽陽性は、求める活性ではないことを確認で きるカウンターアッセイにより排除されるわけですが、偽陰性を 最低限にすべく、やはり少しでも優れたアッセイ系が望まれます。 冒頭の「N エヌ =1 イチ の恐怖!」から逃れるための一つの方法として、ホ モジニアスアッセイをとりあげましたが、系を構築するにあたり、 化合物の影響を十分認識せずにアッセイ系を構築し、実際にス クリーニングをはじめてからサンプルの影響に気がつくことがな いように。せめて、「N エヌ =1 イチ の不安」にしてスクリーニングを始め たいものです。 テクニカルの ひ こ と と コラム カラークエンチング カラークエンチング (励起光の吸収) (蛍光、発光の吸収) 自家蛍光 光源 シグナル ケミカルクエチング 光を吸収する化合物(着色物質) 自家蛍光物質 阻害物質 検出器 テクニカルサービス Tel. 03-3669-7980/Fax. 03-3669-7982 E-Mail : prometec@jp.promega.com プロメガ株式会社 本 社 〒103-0011 東京都中央区日本橋大伝馬町14-15 マツモトビル Tel. 03-3669-7981/Fax. 03-3669-7982