1. HOME
  2. 全件表示
  3. テックの一言コラム_2016年3月号 生細胞を用いた薬剤結合試験のすすめ ~ Target Engagement と Residence time ~

テックの一言コラム_2016年3月号 生細胞を用いた薬剤結合試験のすすめ ~ Target Engagement と Residence time ~

〈Fig 3〉では、HDAC1-NanoLuc® 融合タンパクを発現させた細胞 にあらかじめ、SAHA、Mocetinostat, FK228 処理を行い、洗浄後、 SAHA-NCT を添加し、BRET を測定しました。HDAC1との解離が 早ければ、早く BRET シグナルが得られ、増加します。SAHA は SAHA-NCT 添加 20 分後にほぼプラトーに達しました。これは、 SAHA の膜透過時間と一致、SAHA の早い解離が観察されました。 一方、Mocetinostat は解離が遅いものとして報告されていますが、 ここでもゆっくりとした解離が観察されました。また、プロドラッ グである FK228 は、Mocetinostat よりもさらにゆっくりとした解 離が観察されました。FK228 はがん細胞に対して、ゆっくりとし かし長い生理活性を持つことが知られており、この NanoBRET™ の結果は、その活性を支持しています。文献ではプロドラッグ TDP-A についても同様の結果が得られています。 このように BRET を用いた、Target Engagement および residence time の評価は、細胞における薬効を評価する上でひとつのツー ルになると考えられます。 Promega では、この HDAC 用トレーサー SAHA-NCT のほかに、 Bromodomain 結合活性をみる iBET-762-NCT およびさまざまな Kinase を評価するトレーサーを開発しています。ご興味のある 方は、お問い合わせください。 生細胞を用いた薬剤結合試験のすすめ[Vol. 10] ~ Target Engagement と Residence time ~ 2016 年 3 月号 薬剤の標的分子への結合の選択性と親和性を理解することは、 薬剤を評価するうえで重要なポイントとなります。これらを評価 するにあたり、従来は単離精製した標的分子を用いたセルフリー 系が用いられてきました。しかし、セルフリー系は、生体内で の環境と大きく異なり、必ずしも薬剤の実際の効果環境を反映 しているとは言えません。 そこで、BRET を用いた評価系、Target Engagement が開発されま した。ここでは、Nature Communications 6(2015), Article number: 10091 に掲載されたものをご紹介します。なお、BRET について は、「テックのひとことコラム」2015 年 11 月号にも掲載しまし たのでご参照ください。 標的タンパクと BRET のドナーである NanoLuc® ルシフェラーゼ との融合タンパクを発現した細胞に、BRET アクセプターとなる 蛍光で標識した膜透過性トレーサーを添加します。トレーサー が標的分子に結合すると BRET が起こり、アクセプターが光を発 します〈Fig 1 左〉。またこの結合試験に、非標識の薬剤を添加 することにより、結合阻害を見ることができます〈Fig 1 右〉。 ここでは、HDAC 阻害剤 SAHA に蛍光標識した細胞膜透過性ト レーサー SAHA-NCT を作成し、HDAC1-NanoLuc® 融合タンパク を発現した細胞に添加して、細胞内の HDAC1:SAHA-NCT 結合 活性を〈Fig 2a〉、またさまざまな HDAC 阻害剤の SAHA-NCT 結 合に対する阻害活性を観察しました〈Fig 2b〉。文献では、SAHANCT が他の HDAC サブタイプにも結合することも示しています。 この競合試験により各薬剤の細胞内結合阻害活性を測定するこ とができました。 この細胞内での HDAC1 への親和性と、薬効のひとつとして細胞 増殖抑制効果(細胞内 ATP 測定)を比較しました〈Fig 2C〉。 HDAC1 への結合阻害活性(X 軸)と細胞増殖抑制効果(Y 軸) の相関が取れることが示されました。実際には他の HDAC との 相関も見ていますが、HDAC1, HDAC2 との明確な相関が観察さ れ、HDAC1, HDAC2 が多くのがん細胞での細胞増殖にかかわっ ているという報告と一致した結果を得ることができました。 一方、薬剤の有効性に、標的タンパクとの結合の非平衡状態で の結合-解離が影響すること、特に residence time(滞留時間) が重要な指標となることが明らかになってきました。加えて、細 胞内で修飾をうけるプロドラッグは、その修飾を受けた状態で 評価する必要があります。 テクニカルの ひと こと コラム 10–4 10–2 100 102 0 5 10 15 BRET (mBU) HDAC1 6 7 8 4 5 6 7 8 9 10 pIC50 (M) viability ACY1215 FK228 Panobinostat M344 Mocetinostat SAHA TSA R2 = 0.95 [SAHA-NCT], µM pIC50 (M) BRET TSA SAHA Mocetinostat M344 ACY1215 Panobinostat FK228 0 20 40 60 80 100 120 HDAC1 10–4 10–2 100 Normalized BRET [Compound], µM 〈Fig 2〉SAHA-NCT を用いた Target Engagement および細胞生存性試験 (a) (b) (c) 〈Fig 3〉細胞を用いた化合物の residence time 測定 20 40 60 80 100 120 0 20 40 60 80 100 Time (m) Vehicle SAHA Mocetinostat FK228 Residence Time: HDAC1 Normalized BRET Target Target Target Drug Tracer Luc Luc Saturate w/ test ligand Wash Add Tracer Measure BRET(real time) Luc 〈Fig 1〉BRET を用いた細胞内蛍光標識化合物結合試験(Target Engagement) Target Target NLuc NLuc Intracellular BRET Complex Competitive Displacement Unknowns Tracer テクニカルサービス Tel. 03-3669-7980/Fax. 03-3669-7982 E-Mail : prometec@jp.promega.com プロメガ株式会社 本   社 〒103-0011 東京都中央区日本橋大伝馬町14-15 マツモトビル Tel. 03-3669-7981/Fax. 03-3669-7982