テックの一言コラム_2016年4月号 今、注目の Liquid Biopsy(液体細胞診)
このような活用方法 に関しては研究段階 の内容であり、どのく らいの精度でがん本 体の遺伝子異常を捉 えることができるかな どの問題もあります。 し か し、Liquid Biopsy の技術は将来、血液 のみでがん診断・検診 ができるようになる画 期的な技術です。 ③ プロメガの自動核酸精製技術による ccfDNA 精製 プロメガは種々の生物種からの核酸精製法やノウハウを活用し て、効率よく ccfDNA を抽出する技術を開発しました。さらに、 多くのサンプルを 1 度に自動処理できるよう、自動精製装置 Maxwell® RSC に対応しました。プロメガの精製法でのステップ と従来のカラム法のステップとの違いを図 3(a)に示しました。 カラム法では精製完了まで 17のステップが必要であるのに対し、 プロメガの精製法では 3 ステップ(約 75 分)で簡便に ccfDNA を精製できます。また、図 3(b)には 1 mL の血漿から抽出でき た ccfDNA の量を示しました。精製装置を用いたプロメガの精製 法の場合でも従来のカラム法と同量の ccfDNA が抽出できまし た。これにより実験者の熟練度に依存せず、多数のサンプルを 一定の条件で抽出することが可能になりました。 プロメガでは機器のデモや貸し出しのサービスに加え、トレー ニングサービスを開始しました。ご興味をお持ちの方はお気軽 にご連絡ください! 詳しくは、プロメガクラブページまで www.promega.co.jp/promegaclub.html 今、注目の Liquid Biopsy(液体細胞診) [Vol. 11] 2016 年 4 月号 Liquid Biopsy とは血液や尿、髄液などの体液サンプルを用いて、 疾患の状態を調べる診断法です。今回のコラムでは、がんの研 究分野で今、注目されている Liquid Biopsy について紹介します。 ① 低侵襲な診断方法としての Liquid Biopsy がん治療において、がんがもつ遺伝子異常を標的とした分子標的 薬での治療が行われるようになりました。分子標的薬での治療 の際には標的となる遺伝子異常を探索する必要があります。標 的遺伝子の探索には、外科的に切除したがん組織や、内視鏡や 穿刺針によって採取された組織(生検)が用いられています。ただ、 手術や針を用いての組織採取は患者さんの負担が大きく、複数 回の組織の採取や検査が難しいなどのデメリットもあります。 それに対して Liquid Biopsy では血液中などに含まれている生体 物質(バイオマーカー)を指標として検査を行います。例えば、 注射針はちょっと痛いですが、採血のみの低侵襲な方法で、患 者さんの検査が可能になります。 血液中を例として Liquid Biopsy でのバイオマーカーの候補の一 例を図 1 に示しました。 血中循環腫瘍 DNA (ccfDNA:circulating cell free DNA)、がん細胞か ら放出されるエクソソー ム・タンパク質、血中に 放出されたがん細胞自身 (血中循環がん細胞 , CTC: Circulating Tumor Cell)、代謝産物(オンコメタボライド)などが有望なバイオマー カーとして注目を浴びています。 ② がん治療へバイオマーカーの活用例 Liquid Biopsy の技術は生検の代替技術としてのみではなく、複数 回の検査が可能であることから、治療効果のモニタリングへの 活用にも期待されています。図 2 にはバイオマーカーの 1 つで ある ccfDNA の活用例を示しました。ccfDNA はがん細胞の遺伝 子異常の情報を保持しているため、分子標的薬の治療の選択の 判断基準として使用できる可能性があります。図 2(a)(- b)では ccfDNA から得られた情報により治療薬が決定され、治療の結 果、遺伝子異常をもつ ccfDNA 量の低下、すなわちがん細胞が 減少しているイメージ示しています。ですが分子治療薬のデメ リットとして、がんの性質にあった治療を行っても、時間が経つ とがんの性質が変わって効果がなくなってしまうことがありま す。図 2(b)(- c)では新たな遺伝子異常を持ったがんの出現を示 しています。 図 2(c)の場合に、血中のタンパクなどを指標とした従来の検査 方法ではがん再発の検出に時間がかかっていました。しかし、 ccfDNA では従来法よりも早い段階でがんの再発を見つけられた という結果も得られつつあります。 テクニカルの ひと こと コラム 図 1. 液体細胞診でのマーカー例 図 3. プロメガの精製法と従来法の比較 図 2. がん治療への展望 遺伝子変異を持つ ccfDNA の量 (a) (b)(c) 治療期間 新たな遺伝子 変異をもつ ccfDNA ccfDNA 遺伝子変異を もつ ccfDNA 血液 血中循環腫瘍 DNA 血中循環 DNA 1 mL の血漿より抽出(リアルタイム PCR 定量) 12 10 8 6 4 2 0 プロメガ 従来法(カラム法) ccfDNA (ng) (b) 従来法(カラム法) 17 ステップ プロメガ 75 分で ccfDNA 抽出 完了 Maxwell RSC 立上げ 血漿を添加 ProK 添加 カラムに 添加 吸引操作 インキュ ベーション ccfDNA 溶出 血漿添加 カラムの 準備 Wash 液①で 洗浄 バッファー 添加 キャリア RNA 添加 5 分インキュ ベーション Wash 液②で 洗浄 インキュ ベーション 30 分インキュ ベーション バッファー① 添加 エタノール 洗浄 カラム 2 に 添加 (a) テクニカルサービス Tel. 03-3669-7980/Fax. 03-3669-7982 E-Mail : prometec@jp.promega.com プロメガ株式会社 本 社 〒103-0011 東京都中央区日本橋大伝馬町14-15 マツモトビル Tel. 03-3669-7981/Fax. 03-3669-7982