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ルシフェラーゼ遺伝子を応用した分泌タンパク質の解析

ルシフェラーゼ遺伝子を応用した分泌タンパク質の解析 NanoLuc® ユーザーセミナー プロメガ HiBiT 検索 私は細胞内タンパク質の細胞内ダイナミクスに興味があり、細胞内あるいは細胞内から細胞外への各タンパク質の 動態を様々なスクリーニング系を用いて解析を行っています。その中でも IL1 βを代表として一部の分泌タンパク質 については分泌シグナルを持たず、かつ小胞体-ゴルジ体を経由せずに細胞外へと輸送されるという非古典的分泌 経路に現在着目をしています。私はこの経路をとる新規のタンパク質の同定とその分泌機構の解析を目的に研究を 進めていますが、肝心の分泌機構の解析には細胞外の分泌タンパク質の定性・定量解析を行うことが必須となり、 分泌タンパク質解析に一般的に利用される ELISA 法などでは新たに特異的な抗体が必要となるなど様々な問題が浮 上してきました。そこで既存の手法に代わる分泌タンパク質の簡便かつ安価な定性・定量解析システムとしてルシフェ ラーゼ遺伝子を応用した単純な解析手法を考えました(図1)。既存のルシフェラーゼ遺伝子に加えて当時プロメガ が新たに販売を開始した NanoLuc® を IL1 βに融合させた発現ベクターを使ってプレアッセイを試みた結果、IL1 β -NanoLuc® を遺伝子導入した細胞の培養液でのみ劇的な発光シグナルを確認することができました(図2)。この結 果を踏まえて NanoLuc® を用いて非古典的分泌経路をとる新規のタンパク質の分泌解析を行ってきましたが、強制発 現系では内在性タンパク質の分泌機構を正確に解析することが困難であるという新たな問題が出てきました。その ため現在はスプリット型 NanoLuc® として開発された極小発光タグである HiBiT を使用して、ゲノム編集技術を用い て作製した HiBiT タグ・ノックイン細胞とノックインマウスを用いて小胞体-ゴルジ体を経由しない細胞外への細胞内 タンパク質の分泌機構の解析を進めています。 また上記の解析に加えて HiBiT- LgBiT の高親和性に着目し、どんな分子生物学解析にも対応できる「バーサタイル (万能)タグ」としての HiBiT 技術の可能性についても検討を進めており、その成果は 2017 年度生命科学系学会合 同年次大会にて皆さんにご紹介したいと思っています。 東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 システム発生・再生医学分野 松島 隆英 先生 図 1. ルシフェラーゼ融合タンパク質による分泌解析システム 分泌タンパク質解析に一般的に利用される ELISA 法に代わる技術として目的タンパク質 にルシフェラーゼを融合させた状態で細胞に発現させることで、ワンステップでタンパク 質の分泌量を発光シグナルとして測定する。 これまで良い抗体がなく実験が滞っていた方に朗報でした。HiBiT は抗体フリーで分泌タンパクを解析できる画期的なツールで あるとご評価頂きました。さらにゲノム編集への応用において、その高輝度性、スクリーニングの簡便さから、内在性の遺伝子 発現解析に相性抜群のタグであるとのコメントを頂きました。今後 HiBiT のポテンシャルをさらに引き出す万能タグとしてのツー ルを開発予定とのことでその進捗に期待です! プロメガ学術部員の 目からウロコ Nucleus ER Golgi Free Ribosomes Transport Vehicle Luciferase assay ルシフェラーゼ遺伝子を利用した発光システムはワンストップの作業で生体内の分子の作用・挙動を検出可能なパラメーター(レポーター活性)に変換する手法で あり、シグナル伝達解析やバイオセンサーなどといった様々な分子生物学的解析に利用されている。我々の研究室でもルシフェラーゼ遺伝子を応用した様々なス クリーニング系を開発してきた。その中でも近年では煩雑かつ高価な ELISA 解析に代わるシステムとして NanoLuc®/HiBiT 融合タンパク質を用いたハイスループット アッセイに対応可能な分泌タンパク質の定性・定量解析システムを開発して研究に利用している。特にスプリット型 NanoLuc® として開発された HiBiT タグは 11 ア ミノ酸の付加により目的タンパク質の発光定量を可能とした「極小」の発光タグであり、ゲノム編集による各遺伝子へのタグ付け( タギング)の際にも一般的に利 用されているルシフェラーゼ遺伝子群と比較して利用しやすい特性がある。我々はその特性を利用して HiBiT タグ・ノックイン細胞とノックインマウスの作製をシ ステマティックに進め、小胞体-ゴルジ体を経由しない細胞外への細胞内タンパク質の分泌機構の解析を進めている。本発表では我々の研究成果を交えながらウ エスタンブロットや免疫沈降、免疫染色といった分子生物学解析に広く利用されている F LAG などの既存のスモールタグに取って代わる「バーサタイル(万能)タグ」 としての HiBiT 技術の可能性について論ずる。 12/7 神戸で行われる 2017 年度生命科学系学会合同年次大会 ランチョンセミナーでお待ちしております。 2017 年度生命科学系学会合同年次大会 ランチョンセミナーで松島先生よりご講演の要旨 ● ELISA に代る技術として NanoLuc®/HiBiT 融合タンパク質を用いたルシファラーゼアッセイが有用である。 ●極小発光タグである HiBiT タグはゲノム編集によるノックインが容易である。 ● HiBiT タグはバーサタイル(万能)タグ?(続きは 2017 年度生命科学系学会合同年次大会で)。 結論 図 2. ルシフェラーゼ融合 IL1 β発現細胞の培養液内でのルシフェラーゼ活性 HEK293T 細胞に各ルシフェラーゼ遺伝子を融合させた IL1 β発現ベクターと Casp1-Venus 発現ベクターを遺伝子導入し、48 時間ごとに培養液を回収してルシファラーゼアッセイ を行った。IL1 β -NanoLuc® を遺伝子導入した細胞の培養液でのみ発現ベクター量依存的 な発光の上昇を確認することができた。 Luciferase Activity medium (counts/s) Cell:HEK293T cell plasmid:IL1β-LUC+CASP1-Venus(50ng) Plasmid amounts 0 10 25 100 2000000 3000000 4000000 5000000 6000000 1000000 10 25 100 10 N=4, Error bar indicates ±SD Mock 25 100 (ng) IL1β-Luc2 IL1β-hRLuc IL1β-NanoLuc 7Promega  WA BAN