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代謝物質をプレートリーダーで高速解析!

代謝物質をプレートリーダーで高速解析! 細胞ビックバン – 高次元細胞プロジェクト 細胞は周囲を取り巻く環境に適応するために細胞内のシグナル経路や代謝経路を変化させ、生存・分化・増殖といった運命決定を行っています。近 年では癌細胞や細胞分化の過程でエネルギー代謝に変化が現れることが明らかとなり、創薬や再生医療の分野で新たな標的としてエネルギー代謝 が注目を集めています。プロメガでは細胞の多様な応答性を細胞内外の酵素や代謝物を指標として簡便、高感度に測定するアッセイ技術を数多く開 発してきました。今回はエネルギー代謝の主要なマーカーであるグルタミン、グルタミン酸、グルコース、乳酸を高感度な発光法で検出できる新たな アッセイシステムをご紹介いたします。 エネルギー代謝アッセイへの注目の高まり 幹細胞はその多能性を維持するために、解糖系に依存した代謝特性を 示す一方、分化段階が進むにつれてミトコンドリアでの酸化的リン酸化 の活性が高まり、代謝経路が移っていく事が知られています (Int. J. Mol. Sci. 2016, 17, 253)。昨今、がん領域で注目を浴びている免疫系におい ても、代謝経路の変化はホットなトピックであり、T 細胞の分化の際に は解糖系からミトコンドリアでの代謝への変化が起きるといわれていま す (Nature Reviews, 2016, 16, 553)。 また代謝産物がエピジェネティックな制御に関与したり、脳・神経組織 のように代謝産物が神経伝達物質として働くことも知られています (Cell Metabolism, 2016, 23, 27-47、Neuron, 2015, 86, 883-901)。 細胞周囲の代謝産物量の変化、細胞内の代謝経路の評価は今後、重要 なアッセイの1つになっていくでしょう。 発光でのエネルギー代謝産物の測定 これまで、生体反応に関わっている様々な代謝産物を解析するには煩 雑な MS 解析、HPLC、RI などの技術が必要となり、ボトルネックとなっ ていました。 このような背景を受けて、プロメガでは発光法でエネルギー代謝産物 を測定する技術を開発しています。図1にはグルコース・乳酸・グルタミン・ グルタミン酸の測定原理の概要を示しています。各測定対象に特異的 なデヒドロゲナーゼがルシフェリン前駆体を還元することにより発光反 応に必要なルシフェリンを生成するため、各産物の濃度に比例した発 光を生じます。発光シグナルはルミノメーターで簡便に測定できるため、 高価な機器の導入や煩雑な準備を行う必要はありません。また特殊な 前処理を行う必要はなく、試薬の添加・混合のみで測定することがで きます。加えて、この技術は細胞内の測定だけではなく、細胞外(培養 上清)サンプルや組織サンプル、血液(体液)サンプルにも対応可能 です(図 1)。 培養上清や分化誘導した細胞を使ったアプリケーション この技術を使って培養上清中の代謝産物の経時的な変化を測定したア プリケーションを図 2 に示しました。一般的な細胞株では増殖の際にグ ルコースとグルタミンを細胞内に取り込み、代謝産物として乳酸とグル タミン酸を培地中に放出します。 肺がん細胞株の A549 細胞を異なる細胞数で播種し、3 日間培養を続け、 各タイムポイントで培養上清を回収しました。各サンプルは希釈して発 光アッセイのタイミングまで凍結保存し、最後のサンプリング後に発光 アッセイを行いました。 細胞数および培養日数に依存してグルコースとグルタミンの減少が観察 され、その一方で、培地中の乳酸とグルタミン酸量の増加が観察され ました。グルコースとグルタミンが細胞内に取り込まれ、代謝産物の放 出がなされた結果を反映しています。 図 3 にはマクロファージ様に分化誘導した細胞を用いた例を示しまし た。マクロファージには大きく分けて M1 型と M2 型と呼ばれる 2 つの サブグループが存在し、M1 型は炎症の惹起、M2 型は抗炎症反応に関 与すると言われています。また、M1 型は解糖系が亢進している事が明 らかになっています。 ヒト単球細胞株 THP-1 細胞を分化誘導し、各サブグループの代謝活性 を評価したところ、M1 型ではグルコースの取り込み量と乳酸の分泌量 が亢進している結果が観察されました。このような分化誘導による代 謝活性の評価にも対応可能です。 細胞内 3次元培養 サンプル 培地 組織 酵素活性 血液 (体液) 発光代謝 アッセイ 図 1. (上図)グルコース、乳酸、グルタミン、グルタミン酸 測定の原理。 (下図)代謝産物測定アッセイで対応可能なサンプル例 。 図 2. 培養上清を用いた、各代謝産物の経時的測定 各代謝産物のグラフにおいて、濃い棒グラフは 15,000 細胞の条件を示し、薄い棒グラ フは 5,000 細胞の条件を示す。また、赤い点線は培地のみの測定値を示す。培地は DMEM, 5mM glucose, 2mM glutamine, 10% dialyzed serum を使用した。 図 3. T 細胞における代謝活性の比較 THP-1 細胞を PMA で刺激し、マクロファージ様に分化誘導した。その後、M1 型は IFN γ +LPS 刺激にて、M2 型は IL4+IL13 刺激にて分化誘導した。その後、培養上清中の乳酸 量(左グラフ)およびグルコースの取り込み量の評価(右グラフ)を行った。 ※ Glucose Uptake はかわら版 2016 年夏号をご覧ください▶ http://www.promega.co.jp/pdf/ kawara1607_p3.pdf Luminescence 1,800,000 1,600,000 1,400,000 1,200,000 1,000,000 800,000 600,000 400,000 200,000 0 8h 24h 48h 72h Time, hrs Luminescence 800,000 700,000 600,000 500,000 400,000 300,000 200,000 100,000 0 8h 24h 48h 72h Time, hrs Luminescence 1,800,000 1,600,000 1,400,000 1,200,000 1,000,000 800,000 600,000 400,000 200,000 0 8h 24h 48h 72h Glutamine Glutamate Glucose Lactate Time, hrs Luminescence 8h 24h 48h 72h Time, hrs 400,000 300,000 200,000 100,000 0 細胞播種 細胞培養 各タイムポイントで培養上清 2µLを回収 50倍希釈し、サンプルを 分けて発光アッセイ グルコースの消費 乳酸の分泌 グルタミンの消費 グルタミン酸の分泌 M1 IFNγ+LPS 24h THP1 Add 2DG PMA Remove media Wash cells for lactate M0 Media IL4+IL13 M2 M0 4 3 2 1 0 lactate(mM) 乳酸の分泌 Luminescence(RLU) グルコースの取込み M1 M2 M0 3,000,000 2,500,000 1,500,000 500,000 0 1,000,000 2,000,000 M1 M2 NAD(P)H NAD(P) ルシフェリン前駆体 ルシフェリン ルシフェラーゼ デヒドロゲナーゼ レダクターゼ Light Light グルコース、乳酸、 グルタミン、グルタミン酸 4 RentaMax : ルミノメーター貸出しプログラム 本稿でご紹介した発光法によるエネルギー 代謝アッセイはルミノメーター(ルシフェラー ゼアッセイでおなじみ発光測定装置)で測 定することができます。ルミノメーターを利 用できない場合は弊社の GloMax ルミノメーターをお貸出しいたします(詳 細については www.promega.co.jp/rentamax/ をご覧ください)。プロメガ の試薬 & 検出装置の組み合わせで最適なアッセイパフォーマンスが得られ ます。詳細はお気軽にお問い合わせください。 マルチプレックスアッセイへの対応 分化誘導や化合物刺激の後に、細胞の代謝を調べたい場合、化合物処 理や分化誘導が細胞にダメージを与えてしまったり、生存性に影響を及 ぼしてしまい、アッセイ結果に影響が出てしまう事はありませんか?特 に図 3 のような分化誘導をおこなったサンプルや生体由来の細胞、未 分化な細胞といった貴重なサンプルには、出来る限り1つの実験で複数 のパラメーターが取得できる実験が望ましいのではないでしょうか? プロメガではマルチプレックスアッセイ(同一のサンプルに対して、複 数パラメーターを取得するアッセイ)にて、より精度の高いデータを取 得する実験を推奨しており、様々な組み合わせの事例があります。 図 4 は細胞内のグルタミン酸量の測定と合わせて、生存細胞数と細胞 内 ATP 量を測定したアプリケーションです。まず、生細胞の還元能を 指標とした RealTime-Glo™アッセイまたは生細胞に特異的なプロテアー ゼ活性を測定する CellTiter-Fluor™ 蛍光アッセイで生細胞を測定しまし た。次に細胞ライセートを調製し、その一部を用いたグルタミン酸量 の測定や CellTiter-Glo® アッセイを用いて生細胞由来の ATP を 測定して います。貴重なサンプルでのアッセイにおいて余すところなくデータを 取得することができます。 最後に 図 2 や 4 の例のように、プロメガの発光アッセイではわずか数µ L のサン プルからでも測定を行う事が可能です。図 5 に各アッセイの測定レンジ を示しました。この発光アッセイ法は pico mol レベルからの検出が可能 であり、測定レンジも広いため従来の蛍光法では解釈が困難な実験結 果を明瞭に示すことができます。 この他、様々なアプリケーション例を開発中であり、iPS 細胞 由来の分 化細胞や分化誘導した脂肪様細胞、T 細胞の代謝活性評価なども行っ ています。詳細は弊社 Web サイトを参照いただくか、お気軽にお問い 合わせください。 図 4. グルタミン酸量の測定アッセイのマルチプレックス例 A549 細胞を各細胞数で well に播種し、生存細胞、細胞内グルタミン酸量、ATP 量の測 定を行った。 A. アッセイの概要と流れ B. 培地中での生細胞試験(青色のバー:RealTime-Glo™)と、蛍光法での生細胞試験 (オレンジ色のバー:CellTiter-Fluor™) C. 調製した細胞ライセートに含まれる ATP 量を CellTiter-Glo® 2.0 Assay にて測定(青色の バー:RealTime-Glo™)実施後の細胞(オレンジ色のバー:CellTiter-Fluor™)実施後の 細胞(グレーのバー:未処理の細胞) D. 調製した細胞ライセートに含まれるグルタミン酸量を Glutamate-Glo™ Assay にて測定 (上記と同様) Luminescence (CellTiter-Glo™) Cells per well C D 100,000 90,000 70,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 5,000 10,000 20,000 60,000 80,000 Cells per well 0 5,000 10,000 20,000 1,800,000 1,400,000 1,000,000 800,000 600,000 400,000 200,000 1,200,000 1,600,000 Luminescence (Glutamate-Glo™) A B Cells per well 0 5,000 10,000 20,000 3,500,000 2,500,000 1,500,000 1,000,000 500,000 2,000,000 3,000,000 0 12000 10000 6000 4000 2000 8000 Luminescence (RealTime-Glo™) Fluorescence (CellTiter-Fluor™) 培養上清での細胞生存性アッセイ 細胞ライセートの作成 細胞内のグルタミン酸の測定 ATPアッセイ 1 0.001 1000000 10000 100 10 1000 100000 S/N 0.1 10 1000 Lactate Glutamate Glucose Glutamine Metabolites, µM 測定サンプル 検出下限 直線性 S/B 比 Lactate 100nM(5pmol/50 µl) Up to 200 µM >240 Glucose 5nM(0.25pmol/50 µl) Up to 50 µM >1000 Glutamine 5nM(0.25pmol/50 µl) Up to 50 µM >1000 Glutamate 5nM(0.25pmol/50 µl) Up to 50 µM >500 キーポイント 簡 単 な 測 定プロトコル・高 価 な 機 器 不 要 Add to Measure の簡単なホモジニアスアッセイでルミノメーター で測定可能! 頑強で高感度なアッセイ バックグラウンドの低い発光 測定で、幅広いレンジでの測定が可能! 様々なサンプルでの応用例 培養細胞に加え、組織や体 液サンプルの例もあり。もちろんマルチプレックスアッセイ にも対応! プロメガ 高次元細胞プロジェクト 検索 図 5. 乳酸・グルコース・グルタミン・グルタミン酸の測定レンジ 参考文献 ● Donna Leippe et al. J Biomol Screen 2016 Nov. 1087057116675612. ● A Cacace and P Sonveaux et al. Oncogene, 1–11., 2016 関連製品 Assay kit 測定用途 サイズ カタログ番号 価格(¥) Lactate-Glo™ Assay 乳酸量の測定(発光) 5 ml J5021 74,000 Glucose-Glo™ Assay グルコース量の測定(発光) 5 ml J6021 67,000 Glutamate-Glo™ Assay グルタミン酸量の測定(発光) 5 ml J7021 74,000 Glutamine/Glutamate-Glo™ Assay グルタミンとグルタミン酸量の測定(発光) 5 ml J8021 80,000 CellTiter-Glo®2.0 Assay 生細胞測定(ATP・発光) 10 ml(100 回分) G9241 15,000 CellTiter-Fluor™ Cell Viability Assay 生細胞測定(生プロテアーゼ・蛍光) 10 ml(100 回分) G6080 17,000 RealTime-Glo™ MT Cell Viability Assay 生細胞測定(還元能・発光) 100 回分 G9711 20,000 Glucose Uptake-Glo™ Assay グルコース取り込み能の測定(発光) 5 ml(50 回分) J1341 63,000         プロメガ のルミノメーターが最適 ! 超高感度 クロストークゼロ スーパーワイドダイナミックレンジ RentaMAX はプロメガのルミノメーター / 自動精製装置を無償で一定期間 お貸出しするプログラムで、試薬 / 機器の両面からのサポート・コンサル ティングも行います。 「機器がないから…」 大丈夫です、ご相談ください! 代謝アッセイも 5Promega KAWARABAN