核酸定量女子トーク
核酸定量女子トーク シリカとセルロースの蘊蓄話 核酸を結合するマトリックスの中で、おそらくシリカは最もよく知ら れたものでしょう。シリカによる核酸分離は、カオトロピック塩の存 在下でシリカと核酸が結合する性質を利用した技術です。従来の有 機溶媒を用いた手法より手軽さや安全性の面で優れているため、 市販される多くの核酸精製システムにはシリカビーズやメンブレン が広く利用されるようになりました。プロメガ製品であれば Wizard® シリーズ、一部の Maxwell® RSC カートリッジ試薬がこれに該当し ます。 一方、Maxwell® RSC カートリッジ試薬に含まれる磁性体ビーズの過 半数はシリカではなくセルロースビーズです。セルロースと核酸は 塩やアルコール存在下で結合することが知られていますが、意外に もその詳細な結合メカニズムはシリカほど正確にわかっていないよ うです。この多孔質のセルロース磁性体ビーズは比表面積が高く、 核酸結合容量が大きいため、少量のビーズで十分な収量を得るこ とができます。ビーズが少量のため、ビーズの洗浄がしっかりと行 えるので、不純物を高効率に除去することができます。 実例として、植物サンプルの場合ではシリカベースの精製法と比べ、 約 2 倍の高い収量、CTAB 法に比べ同等の収量が安定して得られて います(図および 1, 2)。また、セルロース磁性体ビーズを使用し た自動精製法では、シリカのメンブレンを用いた方法に比べ得られ た血漿 DNA からのがん特異的変異の検出率が改善されたという報 告もあります(3)。 核酸実験では、核酸を精製することが目的ではなく、精製した核酸を用いて解 析をすることが目的よね。精製方法の検討も重要だけど(Maxwell® 活用して!)、 解析の成功には精製した核酸の「量」と「品質」を正しく評価することがとっ ても重要なの!なんで ? って、それじゃあそれぞれの大切さをあなたに説明差 し上げるわ。 精製した核酸がそもそも目的のアプリケーションに十分な量が あるかどうか知る必要があるのは当たり前よね。でも精製した 核酸の濃度を誤って見積もってしまったら、後の実験の成功やデータの正確性 に影響する恐れがあるわ。だから精製した核酸濃度はできるだけ正確に測定し たほうがいいのよ。吸光度測定は簡単に濃度測定できるからみんな使ってると 思うけど、感度が不十分だったり不純物が含まれていたら正確に濃度測定でき ないの。 濃度測定では蛍光測定法を使うのがおすすめ!プロメガにも QuantiFluor® っていう蛍光濃度測定試薬があるわ。qPCR 実験のガイドラインを まとめた MIQE でも RNA 結合蛍光色素の使用が推奨されているわ。 え、 MIQEってなにって ? MIQE を知らないと論文化の時にマズイ時代が迫っている のよ!ゾクッとしたそこのあなた、今すぐプロメガの MIQE セミナー(無償)を 依頼して、MIQE のこと正しく知ろ ? 純度と分解度をちゃんと知ることが重要なの。純度は吸光度測 定の A260/A280 と A260/A230 から見積もることができるわよ ね。もしこれらの比が適正範囲内から外れちゃってたら、不純物が含まれてい る可能性が高いし、正確な濃度がわからなくなるどころか PCR もかかりにくく なっちゃう恐れあり、注意が必要よ!核酸も恋愛もピュアに限るわよね。じゃあ 純度が悪かったらどうしたらいいのって ? そんな時は ReliaPrep™ RNA/DNA Clean-Up and Concentration System(カタログ番号 RNA:Z1071、DNA:A2891) がお助けよ! 7 µL 溶出できるって何気にすごくない !? でもね、吸光度測定での 純度チェックだけじゃ不十分な時もある。分解度の評価を忘れちゃだめよ。 特に RNA は分解を受けやすいし、分解の程度が異なるサンプルで qPCR 解析 すると、本来と異なる結論が導かれることもあるから注意が必要!だから精製し た RNA の分解度を適切な方法で確認することが肝要よ! RNA と比べて DNA は 比較的安定だけど、分解度をきちんと評価しないと正確な解析ができない恐れ もあるわ。特に FFPE サンプルには注意して!ホルマリン固定したサンプルの DNA は断片化していることが多いし、化学修飾の影響や PCR 阻害物質の混入 で PCR がかかりにくくなることもある。だから分解度だけでなくPCR にかかる かどうかを事前に確認することも大切!プロメガには ProNex® DNA QC Assayって いう優れた製品があって、qPCR 装置だけで分解度を評価できるだけでなく「PCR 増幅可能な DNA 濃度」も評価できるから、アプリケーションを確実に成功に導 ける可能性が高くなるわ。 精製した核酸の状態を正しく把握することは、その後の解析の成功に極めて重 要よ!さらに言えば、NGS とか高価なアッセイをお考えのあなた、精製した核 酸の状態を正しく見なかったが故に NGS にかけられなかったり、不正確なデー タを取ってしまったら、時間と労力とコストの無駄よ!品質確認って地味よね、 でもすごく大切だってことわかってくれたらうれしいな。地味な作業でも大切に 思って実験してる人は研究上手よ、まちがいないわ!だからね、量と品質、適 切な方法できちんと評価しよ ? それではシリカをやめてすべてセルロースにすればよいのでは、と思われるかもしれま せん。シリカの優位点は、カオトロピック塩の溶液がサンプルを溶解するため、基本的にサン プル溶解の前処理は必要ですが、一部のキットでは、サンプルを直接 Maxwell® のカートリッ ジに加えることができる、つまりサンプル溶解の前処理を省くことができます。セルロー スでは溶解、Proteinase K 処理といった前処理が必要なプロトコールが基本になります。 このように、プロメガは、シリカやセルロースを使い分けて、サンプルごとに最適な試薬 を設計しています。さらに、それらの精製試薬ごとに、Maxwell® RSC Instrument でも最適 なメソッドを自社で開発しています。Maxwell® RSC の機器と試薬が優れた収量と純度を実 現できる秘密のひとつをご紹介しました。 各種 DNA 精製法による植物からの DNA 精製 新鮮なシロイヌナズナの葉、大豆の葉の凍結サンプル約 20 mg を破砕し、セルロースビーズを 用いた自動精製法、シリカスピンカラム法、CTAB 法を用いて DNA を精製した。精製した DNA は GoTaq® qPCR System(カタログ番号 A6001)で定量した。 CTAB Maxwell® 16 LEV DNA Plant Kit 他社植物用キット Arabidopsis 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 Yield (µg) B. CTAB Maxwell® 16 LEV DNA Plant Kit 他社植物用キット Soybean Yield (µg) 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 D. 参考文献 1. Moeller, J.R., et al. (2014) Paramagnetic Cellulose DNA Isolation Improves DNA Yield and Quality Among Diverse Plant Taxa. Appl Plant Sci. , 2(10): 1400048 2. Grooms, K. Review: Improved DNA Yield and Quality from Diverse Plant Taxa. Promega Corporation Web site. Updated March 2015; tpub 162. 3. Nakashima, C., et al. (2018) Automated DNA extraction using cellulose magnetic beads can improve EGFR point mutation detection with liquid biopsy by effciently recovering short and long DNA fragments. Oncotarget. 9(38): 25181–25192. セルロースビーズ近影 MIQE セミナー絶賛開催中! 学術部による無償の訪問セミナーです。 ラボメンバー全員で MIQE を学びませんか ? お問合せはプロメガ学術部まで。 E-mail:prometec@jp.promega.com 素材のはなし 定 実 量 験 上 上 手 手 は ! 㽈 ♬ ♪ 1 量 2 品質 7Promega KWA RBAN