Pfu DNA Polymerase
- なぜTaq DNA Polymeraseではなく、Pfu DNA Polymeraseが使われるのですか? Pfu DNA Polymeraseによる反応はどのように調製すればいいのですか?
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Pfu DNA Polymerase(カタログ番号 M7741)は、高忠実度が必要となるPCRで使用する、Pyrococcus furiosus Vc1 (DSM3638) (1)から単離された耐熱性酵素です。この酵素は5’→3’のDNAポリメラーゼ活性に加えて、3’→5’のエキソヌクレアーゼ活性(プルーフリーディング活性)も示します。Pfu DNA Polymeraseはこれまでに明らかになっている耐熱性酵素の中で最も低いエラー率を示します(2-4)。そのため、Pfu DNA Polymeraseは高い忠実度を必要とするDNA合成に役立ちます(2-5)。ポリメラーゼの正確さとは、そのポリメラーゼが誤ったヌクレオチドを取り込む前までに取り込まれたヌクレオチドの数です。エラー率は正確さの逆の値で、複製されたベースペアあたりの変異数で表されます。Pfu DNA Polymeraseの正確さは7.7 x 105(4)~1 x 106(6)と報告されています。同様のPCRを元にした試験でPfu DNA Polymeraseは、Vent® DNA Polymerase (New England Biolabs, Inc.)の約2倍、Taq DNA Polymerase (3,4)の約6倍の正確さを示します。高い忠実度を得るためには、増幅反応に使うTris系の10×バッファーのpHは8.6以上(25℃)でなければなりません。pH8.0ではPfu DNA Polymeraseの忠実度はTaq DNA Polymaraseの忠実度よりも劣ります。プロメガのPfu DNA Polymeraseに添付される反応バッファーのpHは高忠実度を実現するpH8.8です。この反応バッファーには200μMの各dNTPを反応に使うときに最適な酵素活性を示すように2mM MgSO4も含まれています。反応液に加える鋳型DNAの量を増やすことで忠実度を上げることができます。また、サイクル数を減らすことや変性の温度下におく時間を少なくすることでも可能です。このようにPCR産物の簡単な検出のような一般的なPCRにはTaq DNA PolymeraseやTfl DNA Polymeraseが適しています。一方、遺伝子のクローニングや発現、変異の解析のような高忠実度が必要となるPCRには、Pfu DNA Polymeraseを推奨します。
Pfu DNA Polymeraseを増幅反応液へ最後に加えること(特にdNTPsを加えた後に)が重要です。これはPfu DNA Polymeraseのプルーフリーディング活性によりプライマーを分解し、非特異的な増幅産物が現れたり、収量の低下を起こす可能性があるからです。プライマーの分解を防ぐためにGC含量の高い長めのプライマーを使った場合、5’側の初めの15塩基は分解からほぼ完全に保護されます。したがって適切なプライマーの長さは25~30塩基です。また、プライマーの3’末端へのホスホロチオエート(phosphorothioate)の付加により保護することもできます(7)。増幅反応液は氷上で準備し、95℃にあらかじめ熱しておいたサーマルサイクラーにセットすることを推奨します。伸長反応は1kbあたり2分間で行ってください。(eNotes-FAQ0004)参照文献:
- Fiala, G. and Stetter, K.O. (1986) Pyrococcus furiosus sp. nov. represents a novel genus of marine heterotrophic archaebacteria growing optimally at 100℃. Arch. Microbiol. 145, 56.
- Flaman, J.M. et al. (1994) A rapid PCR fidelity assay. Nucl. Acids Res. 22, 3259.
- Andre, P. et al. (1997) Fidelity and mutational spectrum of Pfu DNA polymerase on a human mitochondrial DNA sequence. Genome Res. 7, 843.
- Cline, J., Braman, J.C. and Hogrefe, H.H. (1996) PCR fidelity of Pfu DNA polymerase and other thermostable DNA polymerases. Nucl. Acids Res. 24, 3546.
- Lundberg, K.S. et al. (1991) High-fidelity amplification using a thermostable DNA polymerase isolated from Pyrococcus furiosus. Gene 108, 1.
- Slater, M. et al. (1998) Pfu DNA Polymerase: A High Fidelity Enzyme for Nucleic Acid Amplification. Promega Notes 68, 7.
- Skerra, A. (1992) Phosphorothioate primers improve the amplification of DNA sequences by DNA polymerases with proofreading activity. Nucl. Acids Res. 20, 3551.
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